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緑を求める本能

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年7月25日

北海道初山別村長北海道初山別村長 宮本 憲幸​​

 

自然と共に

北海道は今、野山や公園、街路樹の木々の若葉が美しい時期となり、多様な自然の中からさまざまな生命力が感じられる、清々しい季節を迎えています。そもそも人間には、緑を求める本能があると言われます。

家の庭先や道端で元気で可憐に咲く花々や、生き生きとした緑の野草を見ると、生あるものの躍動や優しさが感じられ、なんとなく心が落ち着いていくような爽やかな気持ちになります。

自然には、太陽の恵みのもと、青い空、森・里・川・海、風が吹き、水や土があり、人間と共に動物や植物・昆虫等が生存しています。

草木花の彩りを見て、鳥の囀りや虫たちの鳴き声を聴いて、意識・無意識のうちに感覚として得たものが刺激となって、人々の体内にそして心に吸収されていきます。

これらはすべて実体験からでしか得ることのできない、生きている確かな情報であり、自然の恵みに接することにより私たちの体と心が覚醒し始め、心身の健康が維持され、人としての成長を促されているような気がします。

自然には、人が作り出した環境の中では得ることのできない、心豊かに暮らすために必要なさまざまな要素が存在しているようで、私たちの持つ五感を正しく育てなければ、身体の健全性を守り続けることができないのではないかと思います。

心身の健康を保つことは、こうした時代においては社会と環境への貢献でもあり、私たちは、もっと自然と共にあることを改めて強く認識するべきと考えます。

 

自然の中で生きる力を育む

今想えば、子どもの頃は物は豊かではなかったが、暮らしはいつも自然とのつながりの中にあり、多くの人々との係わりのもとで育ってきました。

現代社会は、年齢層が若くなるにつれて、自然体験や友達との遊びの経験が少なく、小中学生の約9割がなんらかの形でネット社会とつながっており、ネット上に溢れる実体験を伴わない情報が、子どもたちの知識として蓄積されていきます。

日本の子どもたちは、身体的な健康度は高いが、精神的な幸福度は極めて低水準にあるとのデータがあり、こうした現状を考えると未来のある子どもたちにこそ、もっと自然を相手にした多様な体験ができるような環境づくりをすることが必要であり、今を生きる私たちの重要な役割の1つであると考えて止みません。

これらはすべて実体験からでしか得ることのできない、生きている確かな情報であり、自然の恵みに接することにより私たちの体と心が覚醒し始め、心身の健康が維持され、人としての成長を促されているような気がします。

豊かな自然の中で元気に遊び、生きる力を育むことのチャンスは地方にこそ多く存在しており、その多様な地域資源を活かし、明日の日本を担う心身共に逞しい子どもたちを育てる仕組みづくりができればと思うところです。

 

豊かな自然を活かした地方からの少子化対策

少子化問題は日本社会の極めて重要な課題の1つです。

みんな、社会がなんとなく流されていることに気付き、これでは駄目だと分かっており、原点に戻さなければならないと考えています。

私たちはそれぞれが自分の子や孫たちの時代には福祉や医療、年金などこのままでは立ちゆかなくなるのではと考えてはいるが、将来展望にたった的確な対応はできているとは言えない現状にあります。

国の施策として少子化問題を決して先送りすることなく、持続可能で確かな施策を実践することが不可欠であり、また自治体も知恵を絞り連携して、家族の素晴らしさや夢を持って子どもを産み育てることができるような社会の実現が今こそ求められています。

物の豊かさを求めた20世紀とは違う、空間や場所、心の豊かさが求められる21世紀。大きく美しい自然に抱きしめられたとき、人の心は解き放たれ、心が澄み渡りどんどんエネルギーが湧いてきます。

その心の豊かさこそが、明日の日本の未来を切り拓く原動力となり、新たな日本の経済成長にも寄与するのではないかと考えます。

少子化対策は豊かな自然のある地方から

今こそ、世界に誇る日本の北の大地・北海道の価値を再認識し、その実現に努力を重ねていきたい。