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まちづくりの原点

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年6月6日

山口県田布施町長山口県田布施町長・田布施町長 東 浩二 ​​

 

「明治の文豪 夏目漱石の著書『草枕』の中に『人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。矢張り向う三軒両隣りにちらちらする唯の人である。唯の人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行く許りだ。人でなしの国は人の世よりも猶住みにくかろう。越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、寛容て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。』という一文があるんですが、ここに、まちづくりの原点があるように思うんです。お互いが住む町ですから、お互いで住みよくしていくことが大切なんです。」これは約20年前、当時町長の寺田幹生さんが、よく口にされていたことです。町長就任以来、先輩の志を引き継ぎ、総合計画のまちの将来像を「笑顔と元気あふれる住みよいまち田布施」とし、まちづくりを進めています。

田布施町は、山口県南東部に位置し、北に県立自然公園「石城山」、中央には田布施川河畔の桜樹、南に瀬戸内海国立公園の一部に含まれる「馬島」、あるいは文化財に指定されている国森古墳等古墳群等、恵まれた歴史と自然豊かな約50平方㎞ほどの小さな町ですが、戦後の日本史において、岸信介、佐藤榮作の兄弟総理大臣を輩出した誉れのある町です。戦禍に打ちひしがれた日本が立ち直り、世界に誇る繁栄した国となっていく道筋において、両宰相の残された功績は絶大なものがあり、いまも町民の誇りです。

 

原稿を書きながら、窓の外を見ると、田布施川の桜が満開で、多くの方が花見を楽しんでいらっしゃいます。せっかくですので、桜に関する話題を紹介させていただきます。

 

田布施川は、昭和62年度に創設された建設省の「ふるさとの川モデル河川」に指定されました。この事業には全国で39の河川が指定され、山口県では役場東側の900mがモデル地区に指定されました。町もモデル地区を中心に中央南土地区画整理事業と公園整備が一体となった地域開発を行い、現在では地元農産物の直売所である田布施町地域交流館、図書館、ショッピングセンター等、町の賑わい創設の場所となっています。

川には、昭和37年から植樹された400本を超える桜の木が、4月には満開の姿で出迎えてくれます。毎年、4月に開催する「桜まつり」は大勢の花見客で賑わい、同時開催のロードレース大会は、桜吹雪が舞う河畔コースとして人気となっています。

また、役場西側にあるのが「ふるさと詩情公園」です。小山を中心に遊歩道が整備された落ち着いた雰囲気のある公園で、この公園から川下にある「さくら橋」までの約500mが河川公園となっており、この一帯を通称ハミングロードと呼んでいます。散策ができる河川道沿いに、懐かしい童謡・唱歌の歌碑26基が並ぶ情緒豊かな公園です。歌碑のうち10基には音楽が流れるミュージックボックスが取り付けられており、春は川沿いの桜、秋は山腹の紅葉が楽しめます。

先に紹介した田布施町地域交流館は、直売所甲子園で優秀賞を2回、金賞を1回受賞し、最近ではイチジクを4個使ったパフェ「いちじくdarake」がSNSやテレビで紹介され大変な人気となっています。また、田布施農工高校と連携し地元特産品を活かした商品開発も進めており、平成14年度のオープン初年度の売上は約7千万円でしたが、令和3年度には約3億7千万円と順調に伸び、毎朝穫れる新鮮な農作物や海産物等、田布施ならではの特産品が揃う場所であり、イチジクを使った、ワインやジャム等の加工品もあります。この直売所の賑わいは、「お互いが住む町ですから、お互いで住みよくしていく」というまちづくりの原点を実感させてくれます。