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将来世代のために、明日に備える

印刷用ページを表示する 掲載日:2022年5月16日

愛知県幸田町長愛知県町村会長・幸田町長  成瀬 敦​​

小さな町の新たな取組

「愛」と「幸せ」のまち、愛知県幸田町は、西三河地域9市1町で唯一の「町」です。豊かな自然環境に加え、町内にJR東海道本線の駅が3駅(幸田駅、三ヶ根駅、相見駅)あることで交通の利便性が高く、この3駅とハッピネス・ヒル・幸田(町民会館、図書館、町民プール)という文化交流拠点を加えた「3駅プラス1」を、都市の骨格を形成する拠点として、コンパクトでまとまりのあるまちづくりを推進しています。また、積極的な工業団地開発により雇用の確保を行いながら、駅周辺で土地区画整理事業による住宅整備を進めてきたことから、若年層の定住者が増加し続けています。

近年の取組として、町内外の皆さんにまずは本町のことをより一層知ってもらうためにタウンプロモーションの一環として、ドラマ・映画のロケ誘致事業に力を入れています。コンパクトだからこそできるフットワークを活かし、町内の小・中学校や消防署などを積極的に開放することで多くの撮影が行われています。メディアを活用して全国に向けて情報を発信し、ドラマや映画のファンが足を運ぶ「新たな観光」のきっかけづくりに取り組んでいます。

そのほか、日本一の生産量を誇る「筆柿」を始め、イチゴやナスなどの農産物が多く生産されており、これらの特産品を使用したグルメの商品開発も行っています。中でも、消防署員のまかないカレーに筆柿ジャムを隠し味とした「幸田消防カレー」は各種メディアで取り上げていただき、令和3年度の1年間で1万5千個以上が販売されました。また、幸田町商工会とタイアップして考案した、ロケの際に演者やスタッフの皆さんが食べる「特産物を使ったオリジナルのロケ弁当」が業界内で大変ご好評をいただいており、さらに一般向けにもテイクアウト販売をすることで、町内飲食店などの活性化にもつながっています。


安全・安心な未来に向かって

本町は、昭和20年1月13日に直下型地震の「三河地震」を経験しており、この地震で生じた断層は「深溝断層」と呼ばれ、県の指定天然記念物となっています。こうした大地震に備え、本町では県外自治体との災害時相互応援協定締結に力を注ぎ、これまでに7市町と協定締結をしました。さらに、「災害に強いひとづくり」を目指し、令和3年4月から消防本部1階で「幸田町安全テラスセンター24」の運用を開始しました。テラスには職員が常駐しており、まちの安全を「照らす」存在として自主防災組織の再編や、小・中学校の防災学習支援、企業や事業所と連携した防災啓発活動、各地区の要支援者対策などの取組を進めています。

三河地震のほかにも過去には、平成20年8月末豪雨により、町内を流れる一級河川「広田川」の堤防が40mにわたり決壊し、床上・床下浸水などの甚大な被害をもたらしました。長年の要望が実り、令和元年度から県の新事業として菱池遊水地整備が進んでおり、24 ha(ナゴヤドーム5個分)の美田が町民の皆さんの生命と財産を守るため、遊水地として生まれ変わります。

さらなる安全・安心なまちの未来を見据え、災害時と平常時の双方で町民の皆さんの幸せをかなえるスーパーシティ構想を「THE WELL CITY 幸田」と名付けました。これは、本町の自然豊かな環境を背景に、コミュニティと福祉医療、交通物流、住宅環境、エネルギー、教育文化、農業などの多様な分野を、先端的なデータ連携技術を駆使してつなぐことで、デジタル田園都市を目指すものです。日本のモノづくりを支える三河地域全体の広い視野で捉えながら、新・旧の住民をなめらかにつなぐコミュニティの実現に向け、アナログとデジタルの双方で推進することで、災害時のみならず常日頃から「町の愛と幸せを汲み上げていく」という構想です。

今まで以上に産官学金連携を推進することで互いの知恵を結集し、協働することの効果を最大限に活かしながら地方創生の仕組みを作っていくことが、これからの自治体経営のあり方のヒントになるのではないかと果敢にチャレンジしています。西三河の小さなまちが町民の皆さんと一緒になって挑戦し続けていく姿勢こそが、魅力・共感・新たな付加価値となり、持続可能なまちづくりにつながることと信じています。