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持続可能な町づくりに挑戦

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年9月20日

徳島県上勝町長徳島県上勝町長 花本 靖​​

上勝町は、徳島藩から徳島県となった時には11村で構成され、明治時代に4回の合併を経て2村となった後、昭和30年に2村が合併し町を発足しました。平成の合併時には3度隣接市町と検討を行いましたが、最終的には単独を選択し現在に至っています。

2級河川勝浦川の上流に位置し、徳島県中央やや南東寄りで東西19㎞、南北12㎞にわたり、面積は109・63㎢で約9割を山林が占めています。合併時に6、265人であった人口も現在では1、484人となり、町では全国で下から5番目、村を入れても65番目の人口の少ない自治体となっています。

私は、昭和32年に上勝町で生まれ、上勝町で育ち、町職員を経て平成25年より町長となり現在3期目であります。

幼少期には小学校5校、中学校2校ありましたが、現在は小中1校ずつです。小学校へは徒歩で、中学校は自転車で通学しました。幼稚園はまだ無かったのですが、年度途中で保護者がお金を出し合い先生を雇用する幼稚園に通いました。幼稚園は友達も多く、3時にはおやつもあり楽しみで通った事を覚えています。学校の前の旭川では、アメゴや鮎、マス、ウナギなど魚種も豊富で、夏休み等には友達と競争で漁をしたものです。当時の川には「チチッコ」と呼ばれるカジカの仲間が沢山いましたが今はほとんど見かけなくなっています。野鳥も秋の田にはスズメが群れをなしていましたが、今はあまり見かけなくなり、代わりにカワウやサギが多く見られるようになってきました。

町の産業においても、当時は山林関係の労働者が多くいましたが、今は数えるぐらいになってきています。農業面でも温州みかんが多く栽培されていましたが、昭和56年の異常寒波により枯死し、大打撃を受けました。その危機を打破するため、農協の営農指導員の提案で、山で採れる葉っぱを料理のツマモノとして生産販売するビジネスが始まりました。高齢者の女性たちを主力にしたそのビジネスは「彩(いろどり)」というブランド名で上勝町を代表する産業に成長しただけでなく、パソコンやタブレット端末を高齢者が利用する新しいビジネスモデルとして世界中から注目されています。

また上勝町は、2020年を目標としたごみをゼロにする「ゼロウェイスト宣言」を2003年に日本で最初に行った町でもあります。これまで17年間町民の方の協力で、リサイクル率は80%を超えるまでになりましたが、ごみゼロは達成できていません。残り20%については、我々消費者側では解決できないことも解ってきました。

そこで、2030年を目標にさらに挑戦すべく、昨年12月議会において、二度目のゼロウェイスト宣言を提案し、全会一致で採択され、新たな道筋を示しました。

ゼロウェイストの先駆者として未来の子どもたちが暮らす環境を自分の事として考え、行動できる人づくりを重点目標に掲げています。2020年4月完成のゼロウェイストセンターに訪れていただくと、上勝町の45分別の取組、80%を超えるリサイクル率が一目でご覧になれます。日本の将来を担う若い世代の皆さんが、環境問題に向き合う関係者に接し、上勝町の取組を体感いただき、日常生活での環境意識の啓発になればと思います。

21世紀は「環境の世紀」と言われています。失ったら二度と取り戻せない環境を守るため、我々人類が解決しなければならない課題は多くあります。また、人口問題についても、国の社人研の人口予測(2040年743人)通りにならないよう、行政としてできる限りの手を尽くす必要があります。

上勝町には「いっきゅうと彩りの里・かみかつ」というキャッチフレーズがあります。その「いっきゅう」という言葉には、1Q、1級、1休等の意味が込められて、難問をトンチで考え解決したいっきゅう和尚さんからいただきました。

これからも課題・難題に対してひとつの疑問を感じ、それを解決していく。そうすれば結果は自ずとついてくると信じて、職員と共に歩んでいきたいと思います。

現在住んでいる人は住み続けたいと思う町、町外の人には住んでみたいと思う町、持続可能な上勝町づくりに全力で取り組んでまいります。