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黒潮に浮かぶ絶景と還住の島

印刷用ページを表示する 掲載日:2021年8月30日

東京都青ヶ島村長東京都青ヶ島村長 菊池 利光​​

青ヶ島は、東京から南へ約358㎞、有人島としては伊豆諸島最南端に位置しています。南北約3・5㎞、東西約2・5㎞、周囲約9・4㎞からなり、楕円形をした断崖絶壁に囲まれた複式成層火山であり、島の半分以上を占めるカルデラは、世界でも稀で典型的な二重式火山を形作っています。外輪山の北西部にあたる大凸部は、標高423mあり、本島の最高地点となっています。

火山島でもある青ヶ島は、天明3年(1783年)に1回目の噴火があり、その2年後の天明5年(1785年)の「天明の大噴火」により、島民163名が八丈島へ避難。その後、天保6年(1835年)佐々木次郎太夫らが先頭に立ち、八丈島へ避難していた島民全員が「還住」を果たした歴史があります。

2回の噴火によってできた、2重カルデラは、2015年にはアメリカのNGOによる「死ぬまでに見るべき世界の絶景13」にも選出され、今では、観光スポットとなっています。また、周りを遮るものがなく、標高が高く空気が澄んでいるため、季節を問わず、星がきれいで、自然のプラネタリウムとなっています。星の鑑賞を目的として来島される方もいます。

青ヶ島村は、日本一人口が少ない自治体で、島民167人(令和3年4月1日現在)、小さいながらも共存共栄を図り、相互扶助の精神で明るく生活しています。現在は、公共施設、特に村営住宅の老朽化が進んでおり、村営住宅の修繕や建替え、慢性的な住戸不足を解消するため、新規住宅の整備を優先的に進めています。また、簡易水道施設の貯水槽耐震化工事、雨水を集めるために作られた集水面の補修工事などの事業も行っており、生活環境改善に努めています。

農業では、花卉園芸のフェニックス・ロベレニーやストレチアなどの切り葉を少量ながらも出荷しています。貨客船の就航率が1年を通して6割程度ということもあり、農作物の出荷はできませんが、特産品「青酎」の原料となる「かんも(さつまいも)」の生産が行われています。この「青酎」は、杜氏が10人、今でもほとんどの行程を人の手で行っており、いずれも同じ味がない幻の焼酎として、人気となっています。また、平成29年10月に島焼酎特区として認可されたことにより、「青酎」の製造過程において副次的に少量生成されるアルコール度数60度の「初垂れ」が、島内でのみ販売ができるようになり、観光資源として期待されています。また、黒潮が海流する位置にある青ヶ島の特性を生かし、その黒潮の海水を汲み取り、「ひんぎゃ」と呼ばれる、稀有な地熱蒸気を利用し、ゆっくりじっくり時間をかけ作る「ひんぎゃの塩」は、まろやかな味のお塩です。今では、お土産だけでなく、有名な飲食店でも使用されるほど人気のある特産品となっています。その他にも、青ヶ島でとれたとびうおを「ひんぎゃの塩」で味付けし燻製にした「とびくん」や昔から家庭で作られていた、島とうがらしと島みそなどをベースに作った「島だれ」など青ヶ島ならではの特産品があります。

漁業は、島の周辺が黒潮の海流域で、豊富な水産資源に恵まれており、マグロやカツオ、キンメダイなどを捕獲し出荷しています。漁船は、港の高台に船溜まりを整備し、港と船溜まり間の移動に索道を使用し、漁船が出航する際は、「空飛ぶ船」を見ることができます。

青ヶ島へは、お隣の八丈島を経由し、ヘリコプターで約20分(毎日就航)、貨客船では、約3時間(週4便。隔週で3便)で、来島できますが、「神のご加護がないとたどり着けない島」と言われるほど、交通機関の就航は天候に大きく左右され、八丈島から渡れなかったり、青ヶ島から出られないこともあります。ですが、雄大で圧倒される手つかずの自然や、島民の温かさ、美味しい島料理や特産品など、青ヶ島でしか体験できないような楽しみも沢山あります。みなさんもぜひ青ヶ島にお越しいただき、直に見て、感じて、味わってみてください。お待ちしています。