高知県町村会長・日高村長 戸梶 眞幸
「日本の高知のほどよい田舎の村」日高村は、県都高知市より西へ16kmに位置する面積44・85㎢、人口5、000人弱の小さな村です。
都市近郊にありながら豊かな自然に恵まれた、JR土讃線が村の中心部を通る交通の便の良い村です。主な産業は稲作を中心とした農業で、特産の糖度7度以上の高糖度トマト「シュガートマト」をはじめ、西日本有数の栽培面積を誇る「霧山茶」や生姜などを生産しています。
仁淀ブルーともいわれる奇跡の清流仁淀川の屋形船や、サップ、カヌー、フットパス、猿田石灰洞でのケービングなどの自然体験観光と村への愛着や誇り等を育むふるさと教育に力を入れています。
日高村の歴史は300年を超える水との闘いの歴史から2つの洪水調整池、樋門や羽根(石垣で築いた護岸堤防・水をはねる役目)、2本の放水路(トンネル)等多くの治水施設を有しています。現在工事中の延長5・3kmの3本目の日下川新規放水路については国のインフラツーリズムの指定を受け、今後観光施設として活用していく予定です。村の弱みを強みに変えていく取組として大きな期待をもって取り組んでいきます。
水害ゆえに稲作しかできなかった村が、国による日下川放水路建設によって、ハウス園芸のトマト栽培に活路を見いだし取り組んでいます。県都から意外と近いですが、村の知名度は非常に低く、そんな誰も知らないところに移住する人はいないわけですから、「食」による知名度を上げるため、村特産の高糖度トマトを活用した「オムライス街道」の取組を始めました。「トマト」と言えば「ケチャップ」、「ケチャップ」と言えば「オムライス」ということで、スタンプラリー等を開催し、村内9店舗で年間6万食を売り上げることができています。昨年は新型コロナウイルスの影響で大きな痛手を受けましたが、起死回生を狙って今年も取り組んでいきます。
何もない村、いいところが1つもない村、気が付いていなかっただけかもしれません。マイナスをプラスに。弱みを強みに変えることができれば、大きな活性化の力になるように思います。
少子・高齢化・過疎・人口減少など地方が抱える大きな課題は、日本が歩んできた歴史の中から突き付けられている課題です。
病院や商店や公共交通がないため、効率が悪く、大きな予算を必要とします。効率が悪ければ効率の良い仕組みを構築すればいいのではないかとか、山から町に集まってもらい病院も買い物も福祉サービスも受けられる、便利で安心して暮らせる場所を創ればいいではないかという考え方があります。果たして、それで幸せでしょうか。住民の幸福度が得られるでしょうか。不便でも長年暮らした自然の中で田や畑でコメや野菜を作り、山や道を守り、隣近所との付き合いを大事にしていく中に、幸せを感じ生きていくことの意味があるように思います。山や川や海や田畑を守り過疎・高齢・人口減少に立ち向かっていっている人々の暮らしや生活を守ることが、ふるさとを守ることにつながるのではないでしょうか。ふるさとは昔からある原風景だけではなく、そこに暮らす人々のつながりがあって初めてふるさとと呼べるのではないでしょうか。地方の再生なくして日本の再生なし、地方の元気が日本の元気と思っています。そのためには1次産業再生がカギだと思います。
ふるさとは自然だけではなく、そこに暮らす人々とのかかわりの中から生まれてくるはずです。