千葉県御宿町長 石田 義廣
御宿町は人口およそ7、400人、面積25㎢のコンパクトな町であります。千葉県房総半島中部に位置し、黒潮おどる太平洋に面し、豊かな緑、温暖な気候等、美しい自然に恵まれ歴史と文化、人情味あふれる町であります。2kmにわたる白い砂浜と変化に富んだ海蝕海岸、そして緩やかな丘稜地に囲まれた御宿町は白砂青松、海の保養地として多くの人々に愛され観光立町として発展し、観光業を中心に漁業、農業が基盤を支えています。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の教訓を受け、海に面するわが町にとって防災を第一としなければならないと決意しました。高台に公共施設が必要と考え、翌年、町議会の賛同を得て標高38mにある学校統合により遊休施設となっていた旧御宿高校跡地施設を千葉県より購入しました。各行政区における自主防災組織を中心に、こども園、小中学校の児童、生徒、消防団など関係機関が防災実地訓練に徹し、避難施設や備蓄品、消防施設の拡充など、防災意識の高揚に努めています。防災行政無線のデジタル化を今年度、全域完成します。
少子高齢化により人口の減少が進んでいますが、御宿町は年間を通し気候が温暖で住みやすく、移住される方も多いため減少率が緩やかになっています。今、高齢者の皆さんに生き生きと心豊かに過ごしていただくため、御宿版CCRC事業に取り組み、医療介護施策の充実を目指しています。
産業観光面において、夏季を中心に白砂の海岸で展開されるビーチスポーツイベントが盛んです。日本ライフセービング協会主催による全日本学生ライフセービング選手権大会(40大学参加)や東日本予選会には多数の選手が参加し人命救助の技を競います。ビーチバレーボール大会ムーンカップイン御宿には全国から300チームが参加し、熱戦を繰り広げます。NPO法人「おんじゅくDE元気」主催による網代湾横断オーシャンスイムレースや海山を駆け巡るオーシャントレイルレースに人気が集まります。また、春秋を中心に旧御宿高校施設を活用していただいている中央国際高等学校によるスクーリング事業が長期間にわたって実施されます。生徒の皆さんは、豊かな自然の中で漁業や農業に親しみ、学習します。これらのイベントなどの参加者は民宿や旅館に宿泊し、展開されますので地域経済の大きな支えとなっています。
ここで町の誇りとする歴史文化を一つご紹介します。今から400年程前、1609年9月30日夜半、御宿沖でフィリピンからメキシコに向かうスペインの大型ガレオン船サンフランシスコ号が台風により遭難座礁しました。乗組員373名は海洋に投げ出され、懸命に岸に向かって泳ぎ着きましたが、残念にも56名が溺死し、317名を地元村民の漁師や海女さんたちが助け上げました。海女さんたちは、水難で衰弱した異国の人々を膚で温め蘇生させたと伝えられています。救助されたドン・ロドリゴ氏を代表とする一行はメキシコの人々で、神社や民家に37日間滞留し、村民から衣食住を惜しみなく与えられました。時は過ぎ、1928年にこのような先人の功績を顕彰し、岩和田の丘に日西墨三国交通発祥記念碑が建立され、1978年には建立50周年を記念し、メキシコ合衆国ロペス・ポルティーリョ大統領が来町され、御宿町民の皆さんに1609年の史実における人命救済の行為に対し謝意を表されました。同年、御宿町とアカプルコ市は姉妹都市協定を結び、2009年には、皇太子殿下のご臨席を仰ぎ、メキシコ記念公園などにおいて、日本メキシコ交流400周年記念式典・サンフランシスコ号漂着400周年記念祭が盛大に挙行されました。また、2013年には、ドン・ロドリゴ氏生誕の地であるメキシコ合衆国テカマチャルコ市と史実のご縁により姉妹都市協定を結び、メキシコ・スペインとの交流を進めています。
今、コロナ禍の中にありますが、皆さんと共にこの難を越えて、町第4次総合計画にみる「笑顔と夢が膨らむまち―共に支え合う挑戦と再生」に向けて邁進します。