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「瀬戸内国際芸術祭」が島を変えた!

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年8月24日

土庄町長の顔写真香川県土庄町長 三枝 邦彦

香川県土庄町は、瀬戸内海に浮かぶ「小豆島」の北西部に位置し、美しい海と四季を通じて温和な気候に恵まれた自然豊かな町です。本町は「豊島」「小豊島」「沖之島」を含む4つの有人離島から構成されており、瀬戸内ならではの多島美は息を呑む美しさです。

明治41年、ヨーロッパ地中海から初めて持ち込まれたオリーブの木がわが国で唯一、ここ「小豆島」にだけ根付いたことをご存知でしょうか。地中海に似た温和な気候はオリーブの栽培に適しており、今やオリーブの生産は島の主要産業にまで成長しています。

県花・県木にも指定されているオリーブは、島のいたるところで目にすることができます。瀬戸内の風にそよぐオリーブの木々が、訪れた観光客を温かく出迎えています。

日本のオリーブの発祥の地である「小豆島」は、人口約2万8千人の島ですが、人口の約40倍、年間約110万人もの観光客が訪れる観光の島でもあります。

小豆島の名が全国に知られるきっかけとなったのは、小豆島出身の作家、壷井栄氏の名作「二十四の瞳」の映画化でした。映画の大ヒットにより、舞台となった「小豆島」には、多くの観光客が訪れるようになりました。

その後、昭和47年の山陽新幹線の岡山開通、平成元年の瀬戸大橋開通など、島へのアクセスが向上したことにより、観光客は順調に増加し、島の観光産業は発展を遂げました。

しかし、バブル崩壊により状況は一変。観光客は大きく減少し、島の観光産業は低迷することになりました。

そのような中、「アートによる地域づくり」を切り拓いてきた福武總一郎氏と北川フラム氏が総合プロデューサーと総合ディレクターを務める「瀬戸内国際芸術祭2010」が開催されることになりました。瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)は、「小豆島」と「豊島」を含む瀬戸内の島々を舞台に3年に1度開催される現代アートの祭典です。開催前は、現代アートに関心のある人しか来ないのではないか、船を乗り継いでまで島々を巡る人がいるのかと、不安に思う声もあり、期待と不安が入り混じる中での船出となりました。

いざ開幕すると、それらの不安をよそに多くの人が瀬戸内の島々に押し寄せ、島を巡るフェリー乗り場には長蛇の列ができました。現代アートの愛好家だけではなく、初めて現代アートを目にする子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の方が来島され、島の自然や文化に調和した作品を体感しました。

昨年、4回目の開催となった「瀬戸内国際芸術祭2019」には、2つの港と12の島々に約117万人が訪れ、過去最高の来場者を記録しました。高松空港の国際線が充実したことや、米紙ニューヨーク・タイムズで「2019年に訪れるべき52の場所」に瀬戸内の島々(Setouchi Islands)が選出されたことなどもあり、外国人観光客の増加が目立ちました。

瀬戸芸の開催を重ねるごとに、島には恒久的に設置される作品が増えているため、開催期間外であっても、現代アートを楽しむ多くの観光客が島を訪れています。瀬戸芸が島を変える“大事件”であったことは、島民のだれもが感じているところです。

本町には、現代アートのほかにも、潮の満ち干きで現れたり消えたりする不思議な砂の道「エンジェルロード」をはじめ、世界一狭い海峡としてギネスブック認定されている「土渕海峡」、国指定特別天然記念物である「宝生院のシンパク」など、多くの観光資源があります。

また、オリーブや素麺、ごま油、醤油、佃煮、小豆島オリーブ牛、小豆島島鱧など、全国に自慢できる地場産品も数多く取り揃えております。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、島はバブル崩壊時以上の大きな荒波にさらされていますが、島民が一丸となり、この苦難を乗り越えていく所存です。

自粛ムードが解消され、気兼ねなく旅行を楽しめるようになりましたら、ぜひ一度、「小豆島」にお立ち寄りください。オリーブの木々とともに心から歓迎いたします。