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今だからこそ、出来ることがあるはず!

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年8月10日

茨城県東海村長山田修茨城県東海村長 山田 修​

未知の感染症、パンデミック、自粛要請……私たちの社会が新型コロナウイルスに翻弄されています。

ウイルスは人を介して感染を拡げており、その連鎖を断ち切ることや封じ込めることの難しさを私たちに見せつけています。目には見えず、症状が出ない人もいるということで、人々を「不安」に駆り立て、その心にも感染しているかのように、社会に混乱と分断を生じさせています。この厄介なウイルスに対しては、ワクチンや特効薬の開発が着実に進められており、やがて実用化も見えてくることでしょう。引き続き、感染拡大への警戒は必要ですが、そう悲観するものではないのかもしれません。

ただし、私が最も懸念しているのは、「新しい生活様式」がどのように定着していくのか、それによってコミュニケーションの取り方がどう変わっていくのか、ということです。「人との間隔はできるだけ2m(最低1m)空ける」「会話をする際は可能な限り真正面を避ける」などと示されていますが、これまで考えたこともない行動様式を求められているわけですから戸惑いは隠せません。時代が変わり、ただでさえ人と人とのつながりが希薄になってきていると言われている中で、“ふれあい”や“支えあい”といった関わり方を抑制させるような生活スタイルは、コロナ禍がもたらした新たな「社会の危機」となってくるのではないかと危惧しています。

東海村は、人口約3万8千人ですが、6つの小学校区ごとに地域コミュニティが形成されており、その「住民力」は非常に高いものがあります。地域自治の推進はもとより、高齢者支援や青少年健全育成などにおいても、ボランティア精神が存分に発揮されてきました。これは、本村の素晴らしい文化でもありましたが、少子高齢化による担い手不足や価値観の多様化により、今後は「新たな共生型の地域社会」を再構築していかなければならないと考えておりましたので、正直なところ、現在の村民の気持ちがどう変化しているのか心配です。地域の方々と膝詰めで話し合っていこうとしていた矢先に、“密を避けて非接触を基本に行動しましょう”と言わなければならないわけですから。

ここで気を付けなければならないことは、不安にかられ過度に委縮し、自らの行動にブレーキを掛け過ぎてしまうことです。本来出来ることがあるはずなのに自ら制限をかけてしまう、やらなければならないことをやらない、いろいろな制限がある中でやれる方法を考えていかなければ前には進んでいきません。コロナを言い訳にして問題を先送りにするような姿勢を続けていたら何も変わりません。

よく、ピンチをチャンスにと言われますが、ビジネスの世界では、市場性がありニーズを的確に捉えたサービスが次々と生み出されています。一方、役場では、行政サービスを従来型の視点で考え過ぎるせいか、思考や行動がより慎重になっているのではないかと感じています。「役場はどう考えているのか」、「何をしようとしているのか」、そうした声に応えながら、チャレンジしていく姿を示していかなければならないと思います。

私は、これまで「地域コミュニティの再生」が必要だと言い続けてきましたが、問題意識の共有までは進んだものの、なかなか次の一歩が踏み出せない状況でした。しかしながら、今、この時期だからこそ、共に考えていけるのではないかと密かに期待しています。私たちは、ウイルスと共生するのではなく、ウイルスを正しく理解しながら、「人と人が支え合える地域共生社会」を目指していかなければならないのです。

コロナショックがもたらした社会的ダメージは大きなものとなりましたが、これを未曽有の出来事として、ただ受け入れるのではなく、村民とともに乗り越えていくことで、以前よりずっと強い絆を手に入れることができる。私は、そう信じています。