ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 町村長随想 > 「食」を考える

「食」を考える

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年6月1日

福井県越前町長 内藤 俊三福井県越前町長 内藤 俊三​

食卓に並べられた日本海の海の幸。

「食」のありがたさを感じ、今日も箸を進める。この時期少々寂しいのが、5月で底曳網漁が終わり、9月まで底曳で獲れる魚が食べられないことである。それでも、定置網で獲れる魚たちが、食卓に賑わいをもたらし、私を楽しませてくれている。

定置網というと、昨年5月に朝獲れアジの無料配布を行った。これは、当町(平成17年に内陸部の2町1村と海岸部の1町が合併)が福井県一の漁業の町であることを、もっと町民に実感してもらい、魚離れの解消に繋げようと、越前町漁業協同組合が行っているものである。昨年の配布が3年ぶりとあって、開始1時間前から200人ほどの行列ができ大盛況であった。漁業協同組合に感謝申し上げたい。

「食」は、私たちが生きていくうえでの基本であり、私たちの健康を左右する大切なものである。栄養の偏りや不規則な食事は、肥満や生活習慣病を引き起こし、多量飲酒は肝機能を低下させる。こうした中、私たちは、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。今一度、見つめ直してもいいのではないか。

6月は食育月間。福井県は、食育発祥の地である。

私はこの機会に越前町の食育、さらには、越前町の「食」を充実させていきたいと考えている。

当町では、毎年6月の食育月間にあわせ、地場産100%の食材をふんだんに使った学校給食を小中学生に提供している。この給食を「えち膳の日」給食と命名し、年2回実施している。また、11月には、カニの町ならではのセイコガニ(越前がにの雌がにの通称)まるまる1匹を給食に提供し、食べ方も学んでもらっている。当町の学校給食における地場産食材を使用する割合は約70%である。今後とも新鮮な海の幸、山の幸、里の幸を提供し、子ども達の健康な心と体を育み、ふるさと越前町の「食」と文化が継承されていくことを期待している。

一方、私は町長に就任して以来、「観光立町」を目指し、まちづくりを進めている。その観光の柱の一つが、「食」の観光。その中心となるものが、冬の味覚の王様、越前がに。毎年、11月6日午前0時に越前がに漁が解禁となり、翌年の3月20日まで続く。この全国ブランドにより、当町の観光が成り立っているといっても過言ではない。しかし、通年型観光には、越前がにの漁期以外の「食」をどうするかが問題となる。そこで着目したのが、新たなご当地グルメとしての舟盛り料理である。舟盛りのメインとなる魚は、季節やその日獲れる新鮮な魚によって変わる。舟盛りの主役が毎日交代するということである。

カレイやタイ、アジなど越前町産の多彩な海の幸で、町をアピールしたいと考えている。今年2月に行われた試食会では、町内の観光事業者がオリジナルの舟盛りを披露した。炭火焼きや、しゃぶしゃぶなど趣向を凝らしたさまざまな舟盛りが用意された。近年、観光の主流となっている「コト消費」を意識し、調理体験も取り入れられていた。

現在、日本初の舟盛りの聖地を目指し、開発に取り組んでいるところである。この取組が新たなお客様を呼び込み、北陸新幹線敦賀開業と相まって、魅力ある観光地として更なる発展を遂げて行くことを大いに期待している。

昔から、初物七十五日と言われるが、お陰様で海あり、山あり、里ありの当町は、1年をとおして旬のものが味わえ、「人生100年時代」を生き抜くには最高の場所であると自負している。ただ、この地の利に甘えることなく、食生活の改善はもとより、運動不足を解消したばこやアルコールを控え、こころの健康にも備えるのは言うまでもない。

皆さんも、この食育月間に今一度、「食」の魅力について学び、理解を深め、ご家族お揃いで「おいしく、楽しく」食事することをお勧めしたい。