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自然の恵みによる島づくり(産業振興)

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年5月11日更新

東京都八丈町長  山下 奉也東京都八丈町長 山下 奉也​

東京から南方海上287kmに位置し、面積69・11㎢、八丈富士(西山854・3m)と三原山(東山700・9m)の二つの山があるひょうたん型をした島が、私の暮らす八丈島です。

黒潮暖流の影響を受けた海洋性気候を呈し、年平均17・8℃、高温多湿で雨が多いのが特徴で、自然の恵みが沢山あります。

その恩恵を受けた花卉園芸の栽培が盛んで、農業生産高は、切り葉・切り花を中心として年間18億円を超える基幹産業となっています。

特に八丈町の木でもあるフェニックス・ロベレニーは、国内シェアの9割を超え、切り葉や観葉鉢物として目にするものは、そのほとんどが八丈島産と言っても過言ではありません。

漁業も黒潮暖流の恩恵を受け、かつては日本一早い初ガツオが1月下旬から家庭の食卓に上がる事も珍しくない光景でした。

近年は、温暖化の影響を受け獲れる魚種は変化したものの金目鯛漁などを中心として、漁業生産高は年間約12億円となっています。

商工では、伊豆諸島独特の食文化であるクサヤ加工や、江戸時代に流人が八丈に伝えた焼酎の醸造、八丈島の名前の由来の一つでもある伝統工芸品の本場黄八丈織などがあります。

その他に温泉施設や流人が伝えた文化も色濃く残る事から観光地としての資源も少なくありません。

このように自然や文化は多いものの、日本全国でも喫緊の課題である少子高齢化による人口減少が八丈町でも大きな課題となっています。この課題に特効薬は無く、今できる事を着実に進めることが重要であり、それが10年後・20年後の未来へ繋がることでないといけません。

移住・定住政策は、全国の各自治体が行い、成果がでている自治体が無い訳ではありませんが、一様に飽和状態と言っても過言ではなく、次の一手に結びつかせるための施策が重要となっています。

八丈町では、移住・定住に拘ることなく、島を応援してくれる人々に重点を置き、島の魅力を島外に伝えるなど地域の担い手となりえる関係人口や、観光・合宿などで島に訪れる交流人口の増加に繋がる取組を継続しています。

その中でも島の自然を活かしたスポーツ交流事業やスポーツ合宿の誘致、文化団体の交流など分野は多岐にわたり、島の魅力の発信や再発見に役立っています。

八丈町の高齢化率は40%を超えていますが、幸いなことに元気な高齢者や、技術を持ち、次世代へ伝承できる方々が沢山います。

農業については、平成20年度より開所した八丈町農業担い手研修センターにおいて、生活費の補助などは行わず、研修圃場を使い自分で育て収穫した花卉園芸植物を出荷することで生活をさせるという研修スタイルが、卒業後の自立就農に繋がっています。研修センター以外にも、認定農業者に直接指導を仰ぐ新規就農者も多く、この時に講師役をしていただく農業者も元気な高齢者です。

漁業でも、担い手向けの体験漁業事業を行い多くの若手が参加し、大先輩の漁師の働く姿を見て就漁を決めた方や、島に来たことがきっかけとなり島で就職先を見つけた方もいると聞いています。

このように第一次産業を中心として、後継者の育成や、自然の恵みを最大限活用することにより、島の強みである花卉園芸や漁業による地域振興を行うことが大切だと考えています。

また、八丈町には、六次産業化の素材となる、農業、漁業、製造・加工業、商工業、観光業があり、それぞれの基盤整備や振興策を行うのはもとより、1つの産業からの発生ではなく、経済的資源の点と点を結び面としての実効性を発揮できるように横断的かつ有機的な取組を行い、一次産業から三次産業の誰もが主役となれる六次産業化を行い雇用の場の創出に繋げていきます。

八丈町には、離島ならではの難しい事も多いですが、離島でしか体験できないような楽しみ方も沢山ありますので、皆さんも是非八丈島にお越しいただき、交流人口の増加にご参加いただけますようお待ちしています。