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環境にやさしいまち ~日本初のZEB庁舎~

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年3月2日

神奈川県開成町長  府川 裕一神奈川県開成町長 府川 祐一

開成町は、神奈川県西部に位置する県内で一番面積が小さく、平坦な町です。

昭和30年の町制施行から一貫して人口が増加し続けており、近年の国勢調査では3回連続で人口増加率が県内1位となっています。また、合計特殊出生率も県内1位となるなど、全国的に少子化が進む中で、子どもが多いこと、子育て世代の定住が進んでいることが特徴となっています。


【東日本大震災】

私が町長に就任したのは、東日本大震災が発生した翌月です。

街を飲み込んでいく津波の凄まじい破壊力に言葉を失い、放射性物質の放出を伴った原子力発電所事故の様子に息を呑みました。すぐに頭に浮かんだのは、「わが町の防災体制は大丈夫だろうか?」ということでした。

町長に就任し、直ちに被災地に赴きました。被災地では、住民の安全と安心の拠点であるはずの庁舎が使用できず、想像以上に困難を極めている状況を目の当たりにしました。

自分の目で被災地の状況を確認したことにより、復興に必要な防災拠点の重要性を改めて認識しました。


【新庁舎建設を決意】

被災地から戻り、地域防災計画の見直しに取り組む中で、昭和45年に建設され老朽化が著しい現庁舎が、防災拠点としての機能を果たせるか不安が大きくなってきました。

現庁舎の築年数等を考慮し、耐震補強ではなく建替えを決断し、町の最上位計画である総合計画や地域防災計画に庁舎整備の必要性を位置付けるところから取組をスタートしました。

その後、町民の皆さんとともに、新庁舎整備基本構想や基本計画を作り上げ、一つ一つ手順を踏みながら、新庁舎整備を進めてきました。


【困難を極める】

ところが様々な課題が待ち受けていました。東日本大震災の復興や東京オリンピックの開催による資材の高騰、人手不足が課題となりました。

また、まちづくり町民集会では、建設時期や規模、財政的な不安など様々なご意見をいただき、その一つ一つに丁寧にお答えしてきました。

議会においても同様で、やむなく議案を取り下げたこともありました。

本格的な整備の検討から着工まで7年の歳月がかかりました。

しかし、その間、熊本地震をはじめ、全国各地で自然災害が多発している状況もあり、多くの皆様から防災拠点としての新庁舎整備の必要性をご理解いただけるようになりました。


【日本初のZEB庁舎】

さらに、地球温暖化対策として環境に配慮することも重要な課題でした。

豊富な地下水を活用した空調設備や太陽光発電設備の導入により庁舎として日本初のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の認証を受けることができました。

また、日本初ということで注目を集め、多数の事業者に入札に参加いただいたことで競争原理が十分に発揮され、工事費を抑えることができました。

着工後には、免震装置の不正問題が発覚しましたが、納入前でしたので大事に至らず、結果的に厳しい検査に合格した製品を使用することができました。

国内最大規模の環境イベント「エコプロ」においても、2017~2019年の3年にわたり国のモデル事業として展示スペースをいただき、開成町を全国に向けてPRすることができました。


【持続可能な町を目指して】

国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標の中に「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」という目標があります。

開成町は、率先して省エネルギーや創エネルギーの取組を推進する責務を果たしていきたいと考えています。

また、新庁舎の完成を機に、窓口サービスの充実が図られるよう職員が一丸となって、さらなる接遇力の向上に取り組んでいます。

これからも、「いつまでも住み続けたいと思えるまちづくり」を基本姿勢に、町民の皆さんの満足度が高く、多くの方に選んでいただける持続可能な町を目指してまいります。