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移住・交流人口の拡大に向けたまちづくり

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年2月3日

静岡県森町長  太田 康雄静岡県森町長​ 太田 康雄​

森町は、人口約18、000人、総面積は約134㎢で、三方を小高い山々に囲まれています。町北部には緑豊かな森林が広がり、その森林を源とする清流「太田川」が町を南北に流れ、この川の流れが肥沃な土壌を生み、町中心部から南部にかけて市街地や田園を形成している風情豊かな町です。大正時代に森町を訪れた地理学者志賀重昂が漢詩「森町之賦」で「小京都」と称賛したことから、「遠州の小京都」と呼ばれてきました。現在も当時の面影を残す古い町屋や蔵が残り、舞楽や祭り等の伝統文化が大切にされています。全国の「小京都」と呼ばれるまちで構成する「全国京都会議」に、森町は静岡県で唯一参加しています。このような美しい町並みや景観、歴史文化、環境を活かしたまちづくりに取り組むため、平成27年に遠州の小京都まちづくり基本構想、平成29年に同基本計画を策定し、「遠州の小京都・森町」を全国に発信するよう取り組んでいます。

さて、森町でも少子高齢化が進み、人口減少が喫緊の課題となっています。その対策として地方版総合戦略や第9次森町総合計画に基づき、様々な取組を行っているところです。その一つとして、平成30年4月、移住定住を担当する定住推進課を新設しました。定住推進課では、移住者目線によるパンフレット「TENCOMORI」の発行や、空き家・空き地バンクによる情報発信をはじめ、大都市圏で開催される移住フェアへの積極的な出展で、全国の方々へ、まずは静岡県森町のことを知ってもらい、当町を定住する場所として選択していただけるよう努めています。

また、地域外の若者の視点による地域活性化も必要と考え「地域おこし協力隊」の受け入れを積極的に行っています。隊員は移住コーディネーターと連携を図りながら、地域力の維持・強化を目的とした活動に参加することで、地域の課題解決に向けた様々な活動を行っています。

昨年7月には、新たな魅力創出発信事業プロジェクトとして、体験の里アクティ森を舞台とした新サービス「ロールプレイングトリップinモリマチ」をスタートしました。このサービスは、スマートフォンのARアプリを使用し、森に棲むなぞきゃら「コモコモ」とトモダチになるという体験型アトラクションです。スタートに先立ち、全国に発信するため、東京都代官山で約30社のメディアを集め、記者発表会を行いました。今後もこのサービスを展開・活用し、より広い視点でシティプロモーションにつなげていければと考えています。

さらに、10月には森町の魅力を発信し交流人口の拡大を図るため、東京都内で森町ふるさと交流会を初めて開催しました。首都圏などで活躍されている当町出身の方やゆかりのある方、約50名に参加いただき、町の現在の取組や観光、特産品、移住などの情報提供と意見交換で交流を深めました。参加者の皆さんに当町の魅力を周囲の人にPRいただくよう呼びかけ、今後も継続的に当町に関わり応援していただけるようなネットワーク作りができたと考えています。

こうした様々な取組を進めてきた結果、平成30年以降、空き家バンクへの登録申請が増加し、7件の成立が見られました。また、相談件数は176件、移住者は32名となりました。全国的に地方へ移住を希望する方が増えたという見方がある一方、森町に住んでみたいという方に対して懇切丁寧に相談に応じてきた結果が実を結んだものと考えています。

時代は令和へと変わりましたが、古来から受け継がれている「遠州の小京都・森町」は、いつの時代も変わらないキーワードです。歴史文化を大切にしながら、急速に変化する時代に対応し、様々な手法を用いて交流人口を拡大させ、町民と協力しながら「住む人も訪れる人も心和らぐ森町」を目指して、今後もまちづくりを進めていきたいと考えています。