滋賀県竜王町長 西田 秀治
竜王町は、日本最大の湖・琵琶湖と鈴鹿山系の間に開ける湖東平野の中央に位置しています。2つの竜王山を背景に大地の豊かな恵みを天授し、良質な近江米、四季折々のフルーツ、そして肉質・味ともに研さんを重ねてきた近江牛の肥育など農業が盛んなまちです。また、名神高速道路の竜王ICがあることから、大手自動車工場や大型商業施設が立地しており、さらに「滋賀竜王工業団地」への新たな企業誘致も進み、農工商がバランス良く発展しています。
私は、2019年6月に就任4年目を迎えます。私が町政という道を選んだのは、2014年5月の日本創生会議の増田レポートで我がふるさとを「人口消滅可能性都市」と推定されたことが発端でした。本町は農業を基幹産業として発展したまちであり、優良な田園が広がる一方、市街化区域が全土の7%しかなく住宅開発に苦慮しており、さらには立地企業が多いにもかかわらず、職住近接という生活スタイルが実現しにくいという状況にあり、人口減少に拍車をかけていました。
私は、就任当初から「明るく元気で活力あふれる強いまち竜王町」「次世代に誇れる竜王町」のスローガンを掲げ、2019年度は着実に形にしていきたいと固く決意しているところです。人口減少に歯止めをかける方策の一つとして、2018年度には、「10年後のコンパクトシティ化」や「30年後のグランドデザイン」の構想について、町民の皆さんや有識者とワーキング方式で議論を深めてきたところです。
10年後のコンパクトシティ化構想では「子どもと暮らす喜びを実感できるまちづくり」をスローガンに、老朽化した小学校の新築移転を最優先に、まちの中心核に学校や学童、こども園、公園等の教育・子育て機能を集約し、現小学校・幼稚園の跡地を住宅化、さらに多世代が交流でき、子育てしやすい環境整備とそれを後押しするソフト事業、例えば、中学校卒業までの医療費無償化、学生のバス通学定期半額補助、先進的な英語教育、プログラミング教育をはじめとする教育の充実や、妊娠から出産、子育て期までの育ちを支援する竜王版ネウボラ等を拡充し、竜王の地で安心して子どもを産み育てたいと思っていただけるよう、コンパクトシティ化に位置付けたいと考えています。
さらに、既存の集落における各自治会の維持のために必要な取組や町内全域に点在する様々な拠点、道の駅や商業施設、工業団地等のエリアごとの発展も支援し、中心核と地域をつなぐ公共交通ネットワークの再構築も同時に議論し対策を講じることとしています。免許返納者の交通手段の確保については、喫緊の課題であり、路線バスの再編成やデマンド交通導入の検討、さらに「地域支え合いしくみづくりモデル事業」から派生した「竜王モデルのお出かけ支援」では、退職シニアを中心とする人々が活躍しており、様々な手法を組み合わせて公共交通を補完していきたいと考えています。
また、30年後のグランドデザイン構想については、「竜王の原風景に抱かれた安全でテクノロジーなまちづくり」をスローガンに掲げ、30年後も豊かな自然や文化、産業を守りつつも、生活の様々な場面においてAIやIOTの最先端技術を導入し、便利で快適なまちづくりに向けて、しっかりと取り組んでいきたいと思います。さらに、インフラ整備の観点では、国や県と連携しながら道路整備や河川改修などの基盤の整備も進め、安心・安全なまちづくりを進めて参ります。
竜王町は「近江牛発祥の地」「スキヤキを愛する町」を宣言し、近江牛をはじめとした町内の特産品やまちの歴史、文化等を「スキヤキ」というキーワードで総結集し「竜王町まるごとスキヤキプロジェクト」を展開中です。まもなく改元され、新しい時代を迎えますが、これからも、自然、暮らし、働く、学ぶ、遊ぶなどいずれの分野にも、質実ともに豊かさを実感できるまちだからこそ、誇りをもって全国や世界に発信していきます。