静岡県小山町長 込山 正秀
小山町は、静岡県の北東端。神奈川県、山梨県の県境にある、人口19、000人ほどの町です。小さな町ではありますが、世界文化遺産・富士山の頂を町域に持ち、モータースポーツの聖地である「富士スピードウェイ」、日本さくら名所百選に選ばれた「冨士霊園」、足柄山の金太郎の生まれ故郷など、魅力の詰まった町でもあります。
小山町は、平成31年3月の東名高速道路・足柄SAのスマートインターチェンジ(以下「SIC」という。)供用開始に始まり、平成32年度の新東名高速道路開通に伴う小山PA開設とSIC供用開始、同年開催の東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の自転車競技において町内が会場に選ばれる等、明るい話題が続いています。
勢いのある小山町ですが、大きな苦難も経験しました。平成22年9月8日、台風9号が小山町を襲い、山地や道路、橋など、町内各所に甚大な被害をもたらしました。そこで、特に被害が大きかった山地部については、協議会を立ち上げ、地域住民による山腹や林道補修等の活動の支援や、各行政機関との連携を強化してきました。この取組は高い評価を頂き「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」において2年連続で金賞を頂きました。また、大規模な復旧事業については、国による「民有林直轄治山事業」により、平成27年度から計画期間10年・事業予算70億円という規模で復旧が少しずつ進んでいます。
こうした中、平成24年8月1日には、小山町町制施行100周年を迎え、多くのイベント等が行われ、暗い雰囲気を吹き飛ばす、明るい話題に溢れた年になりました。
ここから、小山町の次の100年に向けた「おやま百年の計」が始まります。ここからの大きな課題、それは「人口減少・少子高齢化」です。小山町の人口が2060年に約10、500人になるという驚愕の推計を受け「小山町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、雇用の創出や子育て環境の整備、多世代が元気に暮らせる環境づくり等において、各種施策を打ち出してきました。
雇用・賑わいの創出については、防災・減災と地域成長を両立させた魅力ある地域づくりを実現する、静岡県の「ふじのくにのフロンティアを拓く取組」にいち早く手を挙げ、現在までに町内8つの地区が「ふじのくにフロンティア推進区域」の指定を受けており、森林資源を有効活用した木質バイオマス発電所やメガソーラーの整備、そこで発生する電気や熱エネルギーを活かした企業誘致、特産品の産直市場等を集めた複合観光施設「ふじのくにアクアイグニス小山」の誘致、富士スピードウェイを中心にレース関係者用ホテル等を集約した「モータースポーツ等の地域産業集積事業」等に取り組んでいます。
住環境・子育て環境の整備については、町による宅地造成・分譲販売を行っており、今後、PFI方式での地域優良賃貸住宅の整備も予定しています。また、平成26年度の公立こども園開園を皮切りに、町内全ての地区での「こども園化」に向けた準備を進めています。その他、町内の高校生年齢相当以下の医療費の全額助成や、町内に住む子供の保育料軽減(第2子以降が無料もしくは半額)など、経済的な支援策も実施しています。
多世代が元気に暮らせる環境づくりについては、今年度から「クアオルト健康ウォーキング」を本格的に導入しております。「クアオルト」とは、ドイツ語で「療養地」を意味しており、気候性地形療法として、医療保険が適用される地域を指しております。
また、JR御殿場線・足柄駅舎を新たな交流拠点として整備することや、町内随一の絶景スポット「誓いの丘」に休憩施設を整備することが決まっており、いずれも隈研吾建築都市設計事務所の設計によるもので、小山町の新たな魅力になることを期待しています。
未曾有の大災害を経験し、町制100周年を迎え、次なる有事といえる「人口減少・少子高齢化」に直面している小山町の「おやま百年の計」は始まったばかりです。