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近き者説び、遠き者来たる

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年10月8日

秋田県羽後町長  安藤 豊秋田県羽後町長  安藤  豊

人口減少と少子高齢化問題は全国の地方自治体にとって共通の課題であり、規模の小さい町村の首長は常にその対策に頭を悩ませていると思います。御多分にもれずわが町も、昭和30年の合併時は2万8千人以上いた人口が半分近くの1万5千人を切るところまで減少が進み、高齢化率も36%を超えて消滅可能性自治体の一つに指定されてしまいました。

私は5年前に秋田県議から町長に就任しましたが、人口減少問題に取り組む必要性を痛感し、庁内に若手職員による「人口減少対策プロジェクトチーム」を作り、様々な人口減少対策の中核を担っています。20年後の町を担うのは若い人たちであり、自らの頭で考え体で行動してほしいとの思いからです。地方創生への取り組みである「羽後町版総合戦略」もプロジェクトチームの提案を中心にして作成しています。

今年度からは地方創生の集大成として9つの事業からなる「うごまち未来の学校」という施策を実施しています。このコンセプトは、町の将来を担う子どもたちをみんなで育て、活躍できる場所を作っていこうというものです。例えば、「しごと-いうご」という事業は、町の活性化センターの中に一日だけのまちを作り、小学生が仕事をして給料を稼ぎ、納税してまちを発展させるというもので、ドイツ発祥の世界水準キャリア教育です。2年目の今年も110人の子どもたちが参加し100人を超える大人ボランティアの協力で貴重な職業体験をしました。

また、町内唯一の高校である羽後高校の魅力化にも取り組んでいます。存続の危機にある高校を再生したいと考え、夏休みを利用してタイ王国に高校生を派遣して連携協定を結んだカセサート大学などと国際交流を実践してきました。私も1週間高校生に同行し、参加した5人の高校生は貴重な経験をしてきました。

さらに、インバウンドの一つとして「羽後町留学」という事業も実施しています。これは、単に観光客を誘致するのではなく、日本語を学びながら田舎体験ができるという海外留学生プログラムで、今年の冬に台湾やタイから学生が羽後町を訪れ、10日間にわたる雪国体験で受け入れたホストファミリーとも強い絆を結ぶことができました。これには、秋田市にある国際教養大学との連携協定が大きな力になっています。

一方、わが町には700年以上続き日本三大盆踊りに数えられる「西馬音内盆踊り」など多くの観光資源があり、毎年8月16日から18日の3日間で10万人を超えるお客様が優雅な踊りを楽しんでいきます。さらに、今年創業200年を超える老舗そば屋など多くのそば屋があり、手打ちそばの町として多くのファンが訪れています。

私は、町長就任後に「道の駅」構想を打ち出し、人口は減っても持続可能な町づくりや観光振興の拠点施設にする事業を進めました。美味しいそばや地元産の新鮮な野菜や花などを一か所で味わうことで町外からの外貨を稼ごうと施設建設を進めました。当初は赤字を心配する声も聞かれましたが、開業1年半で来場者100万人を突破し、道の駅の売り上げも3億円を超えるなど大成功を収め、今も連日多くのお客様で賑わいの拠点になっています。道の駅を運営する「(株)おも・しぇ」の社是は「近き者説び、遠き者来たる」で、最近の町の取り組みに通じる考えかたです。

こうした独自の取り組みを連日多くのマスコミが取り上げてくれ、地元紙では羽後町にかけて「うごく町」として連載もしてくれました。「最近の羽後町は活気があるね」こんな言葉が町内外から聞かれるようになり、さらに今後の町づくりに拍車がかかります。