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受け継がれる「学習と交流」の精神

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年7月9日更新

小国町長熊本県小国町長  北里 耕亮

私の苗字は「北里」ですが、この名前を聞いて皆さんが思い浮かぶ日本人と言えば「北里柴三郎博士」ではないでしょうか。

私が生まれ育った熊本県小国町は、日本細菌学の父と称される北里柴三郎博士生誕の地です。そしてこの博士の残した『学習と交流』の精神は、この小国町のまちづくりの柱として受け継がれています。

小国町は九州の中央、熊本県の最北端、筑後川の上流に位置し、その気候は冷涼多雨であり、気候的、地理的な条件により、古くから優れた木材(小国杉)の産地として栄えてきました。また町内には大きく分けて2つの温泉地、杖立温泉とわいた温泉郷があり、この温泉地は町の観光の大きな柱となっています。

私が町長に就任したのは2007年。目前の課題への対応、そして未来を創るまちづくりとバランスを取りながら町政に取り組んできました。

中でも2014年3月に選定された「環境モデル都市」としての取組はその代表的なもののひとつです。

環境モデル都市とは低炭素化社会の実現に向けた各種事業を先進的に取り組む団体として国により選定されるものですが、小国町ではこの低炭素化事業への取組により、町の活性化を図ってきました。

そんな中、2016年4月に熊本地震が起き、熊本県内でも広範囲にわたって大きな被害に遭い、当町においても長期間にわたっての余震により、町民の多くが避難所等においての不自由な生活を続けました。

この時、町内外多くの方々の支援があり、町は確実に復興の道を歩んでいます。その中には北九州市をはじめ北海道下川町、岐阜県御嵩町、高知県梼原町など多くの環境モデル都市からの人的支援、物資による支援もありました。地域間の繋がり、人の繋がりが小国町を支えてくれたのです。

この「人と人との繋がり」こそ北里柴三郎博士の提唱した「学習と交流」の精神を受け継ぐ、小国町の大切な資源であり財産です。

小国町ではこれまでにも「九州ツーリズム大学」の設立や、体験教育といった交流事業、人材育成事業により、町内はもとより全国に広がる人と人の繋がり、ネットワークを創ってきました。

この流れは現在も受け継がれ、近年では九州を中心に全国の地域おこし協力隊が集う「地域おこしたいサミット」なども開催されています。

そしてこの度、2018年6月、小国町は環境モデル都市の理念を発展的に継承する「SDGs未来都市」の選定を受けることとなりました。

「SDGs 持続可能な開発目標」とは、国連が2030年までに達成すべき世界共通の目標として掲げたものですが、言い換えれば「すべての人が永続的に幸せな暮らしを続けていくための目標」と捉えることも出来るでしょう。

SDGsには貧困の解決や経済成長など17のゴールが設定されています。小国町は地域にある資源、そして住民の皆さん、更には町内外の皆さんとの「繋がり」をフルに活かし、すべての住民が永続的に幸せな暮らしを続けられる町を目指し、再スタートを切ります。

北里柴三郎博士の生まれ育った町に住む一人の住民として、この町がいつまでも「人と人との繋がり」を大切にし、続いていくことを願っています。