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団塊世代の田舎暮らし

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年6月18日更新

エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2604号・平成19年6月18日)

団塊の世代のいわゆる2007年問題に関連して、『田舎暮らしができる人 できない人』というタイトルの新書を上梓した。最近、定年を迎えようとするこの世代の人びとに田舎暮らしへの関心が高まっていることはたしかで、彼らをターゲットとして信託会社や住宅会社はビジネスの拡大を、地方自治体は移住による活性化を狙う動きが活発である。

私にも昨年来このテーマでの講演の要請が多く、それならこの機会に都会人の田舎暮らしに関する諸問題を網羅した案内書を書こうというのが執筆の動機だった。

私は、彼らが積極的に都会から田舎へ引越し、地域に定着して新しい感性とライフスタイルを少しずつそこへ持ち込むことを期待している。

もちろん、村にはかつてよそ者を排斥したような元気はすでになく、活性化のキーワードのもとに新規参入者を受け入れる気分が高まっているものの、いまだ心理的には大きな抵抗が残っている。また都会から田舎へ行く者にも、戸惑いがあり不安がある。たがいの価値観の違いはある意味で「文明の衝突」のような現象を生むだろうから、もし大量の移住が実現したとしてもそれが目に見える具体的な好結果をもたらすには10年以上の時間が必要だとは思うが、もはや拡大する現実の社会に適応しない農村部の住民自治組織のリセットや、膨大な面積に及ぶ荒廃農地の再活用とその結果としての地域農業の都市消費社会との連携など、新しい力が流入することによって望ましい変化が期待できる分野はたくさんある。 

いま日本の社会では、あらゆる分野で現代の世界に適応できるよう脱皮することが求められている。新規参入者の刺激で村の寄り合いが変われば町村議会の議員の質が変わり、町村議会の議員の質が変わればそれは国政のレベルに及んで、日本全体の脱皮に寄与するに違いない。