エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2538号・平成17年10月24日)
10月といえば秋晴れのイメージがあるが、今年は雨模様の日が多く、信州の里山では霧雨の中で気づかないうちに紅葉がはじまっていた。
ヨーロッパは夏に晴天が続き、晩秋から雨が降りはじめる。その晴天の最後の日に、ブドウを収穫してワインを仕込む。日本はその反対で、夏の雨で育った稲を秋に収穫すると、その後は冬に向かって晴れる日が続く。
だから刈った稲を天日に干して乾燥させることができるのだ。
ところが、ヨーロッパでも日本でも、そうした定番の気候がすっかり狂ってしまった。フランスやイタリアではブドウの出来が毎年異常気象に左右されているし、わが家のまわりでも、田に干した稲が雨に濡れている風景を見るのが珍しくなくなった。
異常気象のどこまでが地球の温暖化現象と関係があるのかはわからないが、いずれにしても、人間の過剰なエネルギー消費がそうした異変の原因になっているのではないか、と多くの人が感じている。
しかし、クールビズだの、ウォームビズだの、私たちがどんなにエネルギーを節約する努力をしても、戦争のために飛行機を飛ばして爆弾を落せば、そんな努力は一瞬で帳消しになってしまう。あるいは核実験ひとつで、どれほど地球環境はダメージを受けることか……。
私たちのひとりひとりが「地球にやさしい」暮らしを心がけるのは大切なことだが、環境問題は決して個人のレベルだけで考えてはいけない
憲法の改正論議にも、そんな視点が必要かもしれない。