農村工学研究所研究員 坂本 誠 (第2707号・平成22年2月1日)
1月30~31日の1泊2日で、山形県村山市山の内地区で開催された「みちのく雪かき道場」に入門してきた。
毎冬の除雪作業は、雪国の悩みの種である。しかも、人口減・高齢化に伴って、高齢者のみの世帯や一人暮らしの世帯が増えるなか、除雪の負担は年々増している。
都会から除雪ボランティアを申し出る者も少なくないが、地元として軽々にボランティアを受け入れることができない事情がある。それは、除雪の危険性である。事実、「平成18年豪雪」の際には、全国で150名を超える人命が奪われ、その大半が除雪時の事故によるものだった。幼少時から除雪作業を体得してきたベテランでも、一歩間違えれば死に至る事故を招いてしまうのが除雪の怖さである。
そこで、いざという時に実働できるボランティアを養成しておこうと、3年前に新潟県で始まったのが「雪かき道場」である。
「雪かき道場」の第1の特徴は、除雪技術を効率的に習得できるよう講習を体系化したこと。従来、除雪の知恵や技術は、家族や地域の中で暗黙知として経験的に継承されるものだった。しかし、暗黙知のままでは「血(地)のつながらない」ボランティアへの伝承は困難である。そこで「雪かき道場」では、除雪の知恵や技術を分かりやすくまとめた「指南書」を作成した。参加者は、スコップを握る前に「指南書」を手にして、除雪技術、とりわけ安全への配慮について学ぶ。
「雪かき道場」のもう1つの特徴は、地元住民との交流にある。「師範」を務めるのは地元の大ベテラン。そして夜の交流会では、参加者と地元住民があたたかい手料理と地酒を囲みながら話を弾ませる。「雪かき道場」で学ぶのは、除雪技術だけではない。参加者はボランティアとしての地域への入り方を地域住民も「道場」を通じてボランティアの受け入れ技術を学ぶ。互いの「つながり力」を養い、地域の防災力を高めていこうというのが、「雪かき道場」の隠れた重要な目的である。
そして忘れてならないのが、参加者と地域住民を「つなぐ」スタッフ達の存在。新潟や東京で本業を持ちながら、ボランティアで運営に関わっている。
スタッフらの尽力により、新潟から発した「雪かき道場」は、山形や長野、岐阜にもネットワークを広げている。意欲ある方は、ぜひ道場の門を叩かれたい。