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至福のひととき

印刷用ページを表示する 掲載日:2013年3月4日

至福のひととき

コモンズ代表・ジャーナリスト 大江 正章 (第2831号・平成25年3月4日) 

2月上旬に、福島・会津にある造り酒屋で行われた「大和川酒造交流会」に参加した。都市住民と、1790年(寛政2年)創業の老舗酒蔵の蔵人、そして酒米生産者が 一堂に会する集いである。

2月と言えば、本仕込みが始まり、搾りたてのフルーティーな新酒が飲める季節。この交流会は毎年その時期に合わせて行われる。ぼくは数年ぶりの参加だ。実際に酒が 造られている蔵を訪ね、詳しい説明を聞く機会は、あまりない。もっとも、大半は「早く飲みたい」という顔をしている。

一人に一つ大きめの杯が用意され、杜氏(工場長)自ら、木桶から柄杓で汲んでくださる。今年のこの純米酒を飲むのは、正真正銘われわれが最初だ。まずは香りを楽しみ、 続いて舌の上でころがして、じっくり味わう。美味い!もちろん、お代わり自由。まさに至福のひとときだ。実はこの交流会の別名は「天国のツアー」。ただし、 飲み過ぎて昇天しないように、注意しなければならない。

その後は江戸時代や明治時代に造られた蔵を見学し、メーンイベントの交流会が始まる。すべて地元産の素材を使った手作りの郷土料理が供され、何種類もの酒が飲み放題。 料理に合わせて、辛口・甘口・端麗・ぬる燗をいただく。初めて顔を合わせる人たちが多いけれど、自然と話が弾んでいく。9代目の社長は、小規模水力発電を中心に 自然エネルギーによる復興をめざす「会津電力」構想を熱く語った。

酒造好適米の美山錦は、苗を須賀川市の農業グループが作り、田植え以降は酒造会社の栽培ファームが担当。農薬は使っていない。この農業グループの米から検出された 放射能セシウムは、平均で1キロあたり2ベクレル。長年の土づくりと、いち早くカリ肥料を散布した成果であろう。今後は白米で1ベクレル以下をめざすと話す彼らは、 自信にあふれていた。そうした安全性もさることながら、米作りと酒造りの深い絆と、それを信頼していただく消費者の関係性こそが、もっとも貴重である。