福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2341号・平成13年1月15日)
20世紀最後の万博は、ドイツ北部のハノーバー市郊外で開催され、昨年十月末で閉幕した。当初予想をはるかに下回る1,800万人の入場者、多額の赤字を抱えた事など、万博そのものの存在が問われることともなった。2005年に開催予定の愛知万博に、これらの課題を引き継いだ格好だ。
しかしハノーバー万博には、こうした不評の中にも考慮すべき幾つかのポイントがあった。とくに環境面への配慮である。再生紙で作った紙管を構造材にした日本館は連日入場者の列が出来た。ハノーバー市はフランクフルト、ベルリン、ハンブルグなど、ドイツの主要都市を250キロ以内に治める要衝にある。そのことを活用して、古くからメッセ(見本市)機能を充実させてきた。今回の万博会場もその多くは、これら従来のメッセ会場の再利用で、新規開発を抑制した。今回新たに建設した施設も、大半は企業等で再利用される。環境への新しい感覚が芽生えている。
こうした中、日本で全く報道されていないのが、万博会場東部に万博と一体化して建設されたニュータウン・クロンスベルグである。21世紀を迎えるに当たって、徹底的に環境に配慮した生活空間となっている。まずは万博関係者用として千戸が建設されたが、その際にも、小学校と児童用デイセンターを最初に完成させ、入居者に安心感を与えた。将来的には15,000人から18,000人の新しい町となる。
団地内道路の側溝は、幅1メートル、深さ1メートルにわたって小石を埋め込んだものとし、雨水を出来るだけ地下へ浸透させている。一部の集合住宅や駐車場の屋上は、草や樹木を植栽している。各棟が広場を囲み、そこで遊ぶ子ども達を親が見守る。風力発電、ソーラー発電も取り入れている。ハノーバー中心部への通勤や買い物には、直通の電車(LRT)が導入され、15分で到達できる。
当初から環境面で大きな課題を抱えている愛知万博で、どのような環境への配慮を万博の舞台で表現しようとするのか、期待したい。