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山と都会を結ぶ「森の風」

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年4月17日

山と都会を結ぶ「森の風」

福井県立大学教授 岡崎 昌之 (第2311号・平成12年4月17日)

いよいよ介護保険も始まり、日本の高齢化問題は新しい時代に入っていく。これからは高齢者自身が、高齢化した地域社会をどう支えるか、こんな視点も重要になってくる。徳島県西部、勝浦川の最上流、上勝町にも元気なお年寄達が、高齢者パワーでまちづくりを担っている。1930年生まれの中山多与子さんはその中心メンバー。

10年前に“この指とまれ”と押し花の好きな人で趣味の集まりをもち、先生に習って技を磨いた。残った10人のお年寄でインストラクターの資格をとり、町内の郵便局跡の建物を利用して、押し花入り名刺などを作る「彩工房」を立ち上げた。徳島市内に講師で出掛けたり、町外から視察の人が来たり、周りからも認められてきた。

そんな実績を踏まえて1年半前には、上勝町と徳島市の中間、勝浦町内に彩工房の支店「森の風」を開店した。ガソリンスタンドを改装したその店では、押し花だけでなく、リースなどの飾り、生花、苗、種、肥料も販売する。徳島市内での結婚式のブーケの注文もある。近隣の人たちが趣味で焼いたパンやクッキー、ケーキも並ぶようになり、店も彩りが増してきた。“都会の人に山の風を、山の人に都会の風を”がモットーだ。

ふと周りを見渡すと、回収車による家庭ごみ収集のない上勝町では、車を持たない高齢者世帯は、ごみを焼却場まで持って行けない。家の中にごみが溢れる。野焼きを防ぐためには誰かの手助けが必要だ。65歳まで四国電力の検針員をしていた中山さんは、町内各家の隅々まで知り尽くしている。そこで元気なお年寄にごみ収集のボランティアを頼んだ。現在では53人のボランティア申し込み、84軒から回収の申し出があり、“利再来上勝”が動きだした。子供達を対象に10グラムのどんぐりを1円と交換し「森の風」で使える「徳島どんぐり銀行」も始まった。

エコマネー、ワーカーズ・コレクティヴといったまちづくりの最先端をいく試みとも言える。