ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

切磋琢磨

印刷用ページを表示する 掲載日:2015年9月14日

千葉市男女共同参画センター名誉館長・NHK番組キャスター 加賀美 幸子
(第2933号・平成27年9月14日)

どう生きようか・生きようぞ…生命の誕生から約38億年ぶりにやっと生まれてきたのだから、そして決して長くはない人生なのだから、なにを目的に、 どんな暮らしをしたらよいか…その思いは一人ひとり誰の中にもあるにちがいない。

世界中、一人として同じ人間はいない。何という不思議さ。幸・不幸は別に、成功・失敗は別に、みんなそれなりの努力をしながら生きている。

「切磋琢磨」という言葉を聞かない日はほとんどないくらい、私たちはこの言葉を日常的に使っている。学校で、研究の場で、職場で、家で… 一生懸命生きようとすることを表す象徴的な言葉である。古くは紀元前からあったにも関わらず、少しも古びず、人々は使う。

中国で一番古い「詩経」という詩集の中に、すでに「切磋琢磨」という詩は入っている。孔子が編纂したと言われる詩集だが、孔子といえば紀元前、約500年の人。編集・編纂ということは、 もっと前からあった言葉のはずである。日本はまだ縄文時代。そのころから「切磋琢磨」という詩は存在していたのである。

「… 匪たる君子有り 切するが如く 磋するが如く、琢するが如く 磨するが如し。瑟たり僴たり 赫たりけん(「けん」はくちへんに亘)たり 匪たる君子有り、 終にわする(「わす」はごんべんに爰)可からず」(美しく文才のある君子がいて、骨や角を削り、石を打って磨き、美しく整えるように自分自身を磨いて努力していた。学問をし、心を広くし、明るく輝いている。 そのように力をこめて生きる君子の姿は長く忘れることができない)

…切磋琢磨…切する。磋する。琢する。磨する。紀元前500年以上前からあった詩の中の言葉なのである。時代を超え、国を超え、地域を超え、人々は切磋琢磨してきたのだと、 改めてこの言葉の力と意味を感じて、新鮮に励まされる。