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一石十鳥の農村政策

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年2月18日

一石十鳥の農村対策

作新学院大学総合政策学部教授 橋立 達夫 (第2630号・平成20年2月18日)

栃木県茂木町で「有機物リサイクルセンター美土里館」が稼動したのは、今から5年前のことである。もともと畜産農家の支援のために立案された事業であるが、この事業が今、農村の地域づくりの骨格を形成する事業となっている。茂木町は、20年前から「農村出会い塾」や集落活性化事業(もてぎシャインズ)など、農政に基盤を置いたまちづくりで県内外の注目を集めてきた。こうした事業の延長上に造られた美土里館は、やはり只者ではない。 

美土里館では、牛糞、生ごみ、落ち葉、間伐材や端材、もみがらなどの地域資源を原料として堆肥を作っている。この事業から次のような様々な効果がもたらされている。①畜産公害の防止、②家庭生ごみの処理(リサイクルと焼却コストの削減)、③農業公害の防止(農薬使用の大幅減量、籾がらの野焼き防止)、④林業振興(間伐材、端材の買い入れ)、⑤山林の保全・美化(間伐や落ち葉掻きによる山林環境の回復)、⑥堆肥生産販売(処理コストの回収、土壌改善)⑦農業振興(堆肥使用農産物の品質向上、価格上昇)、⑧健康増進(作る人、食べる人に優しい農産物生産)、⑨食育(地産地消、野菜嫌いが減る)、そしてもちろん、⑩地球温暖化防止の効果もある。

処理コストは、堆肥の売り上げでは賄うことができず、年間千数百万円の赤字が出るが、この額は、従来支払ってきた広域のごみ焼却の負担金の減少でほぼ補うことができている。その上、間伐材や落ち葉を町民から買い上げているから、その分は地域経済に回っている。さらに落ち葉掻きが収入に結びつくことで、久しく山に入らなかったお年寄りが山仕事をするようになり、足腰が強くなって病院通いが減ったといううれしい副次効果も出ている。

このように、美土里館が稼動することにより、町内を中心に、一石十鳥とも言うべき効果が生じている。まさに農村行政における総合政策のお手本というべき取組みである。