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「君は太平洋を見たか、僕は日本海が見たい」

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年4月17日

フリーアナウンサー  青山 佳世(第2997号・平成29年4月17日)

3月19日、山梨県市川三郷町で中部横断自動車道の六郷IC-増穂IC間9.3㎞の開通式が行われた。通り初めの途中に、目に入ったのは横断幕に書かれたキャッチフレーズである。

「君は太平洋を見たか、僕は日本海を見たい」

中部横断自動車道は太平洋に面する静岡県清水市から、山梨県身延町を通り長野県佐久小諸JCTで上信越自動車道と合流するまでの132㎞をいう。さらに上信越自動車道を北上すると新潟県上越市、日本海に出る。

これは、中部横断自動車道の早期実現を訴え、地域と、道の役割を考える「女性みちの会」の皆さんの活動のキャッチフレーズだ。日本海と太平洋がいかに遠い存在だったか、お互いの海に憧れ、道路の開通を願う気持ちが込められている、実にロマンに溢れたフレーズだ。静岡県、山梨県、長野県、新潟県の沿線地域の女性たちは、それぞれの地域で道の清掃活動や、地域の魅力作りに取り組みながら、交流や意見交換を続けている。

私も10年ほど前に初期に区間開通した長野県佐久市で行われたシンポジウムに参加し、生活に根ざした女性たちの視点から、縦(南北)の高速道路の必要性について議論を聞いてきただけに、中部横断自動車道の区間開通はある種の感慨を持って迎えている。道路は繋がらないと、その効果は十分に発揮されず、まだまだこれからだ。

日本は東西の横軸はかなり整備されてきたが、南北の縦軸の整備はまだ弱く、不便この上ない。最近は「いのちの道」と呼ばれるが、医療、防災の観点からも代替道路は必須である。残る部分には険しい山も多く、全線開通までには、まだ時間がかかるが、国の新直轄無料区間と、高速道路会社が作る有料区間を手分けしながら効率的に道をつないでほしいものだ。

長い期間かけて作り上げた高速道路も、開通して走れば、あっという間に通り抜けてしまう。それも多くの人達の苦労の賜物なのだ。