一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3376号 令和8年10月12日)
地方行政の現場で、人口減少に対応して周辺地域から生活拠点や居住地域を縮減していこうとする「シュリンク論」が声高に語られています。私は、安易な「シュリンク」が人口減少を加速させると危惧しています。その主な理由は次の3つです。
第一は、日本の過疎地域の1㎢当たり人口密度は46人であり、これは世界全体の平均60人と比べて大差はなく、絶対的な条件不利による撤退が不可避なレベルではありません。つまり、人口密度の単純な低さではなく、地域のシステム構造自体が問題なのです。
第二は、「シュリンク論」が、人口減少危機の本質を理解していないことです。その本質は、人口数自体よりもお互いを支えている人間関係の数が劇的に減少する、ネットワーク危機にあるのです。例えば、100人の集落が半減して50人になると、人間関係は4950通りから1225通りへと4分の1と、人口の二乗に比例して減少します。
現状のネットワーク構造は、拠点も交通も物流も旧態依然の縦割りで、それぞれ「規模の経済」をめざすものとなっています。「シュリンク論」の多くは、一定の分野ごと利用者数に達しない拠点や路線の「切り捨て論」に留まっています。本当の解決策は、身近な生活圏ごとに多機能な出会い・集いの場としての中心広場をつくり、交通・物流面も含め分野を横断した「範囲の利益」を実現する新たなネットワーク構造へと進化することではないでしょうか。実際にヨーロッパの農山村では、小さな町や村に必ず中心広場があり、広々と暮らす人々をつなぎ合わせています。
第三は、「シュリンク論」が、従来通り海外や中央から資源や食料、エネルギーが流れて来る「借り物の豊かさ」を前提としていることです。昨今の国際情勢や地球環境の悪化を考えると、長い目で守るべきは、切り捨てようとした自前の大地からの循環力のはずです。安易なシュリンクよりもネットワーク進化の時代なのです。