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集落の農家率

印刷用ページを表示する 掲載日:2026年8月24日更新

明治大学農学部教授 小田切 徳美(第3370号 令和8年8月24日)

 「農業集落の農家率」という指標がある。農林業センサスにおいて、農業集落内の総戸数に対する農家数(いわゆる「兼業農家」を含む)の割合を算出したものである。

 筆者は、この値について、大学の1~2年生にしばしば尋ねている。その結果、彼らの回答の最頻値は「3~5割ぐらい」というものであった。「もっと高くてもおかしくないが、最近では移住者も多く、それが半数以下に引き下げている」というのが代表的な答えである。

 「正解」を言えば、2020年時点では6%である。この値が50%を切ったのは、既に50年以上も前の1970年(46%)であり、学生の農村イメージと現実は半世紀以上のズレがある。

 しかし、実はこの値は都市部の大きな「総戸数」を反映して、低くなりがちである。これが地域の実感よりも低く現れることは従来からも指摘されている。実際に、山間地域に限定すれば18%という高さになる。とはいうものの、現代の集落は、山間部であっても、「非農家多数派社会」であることは間違いなく、学生の農村観には修正が必要である。

 こうしたことを書くのは、若い学生の無知を誹るためではない。この「集落=農家多数派社会」という認識が、農政にも根強く残っているようにも思えるからである。

 例えば、農村RMO(地域運営組織)施策である。農水省の「農村RMO」には要件があり、そのひとつが農地管理である。しかし、先の数字にあるように農地に直接関与する住民は少数派である。実際、農地管理に関わるRMOはかなり少なく、「農地の利活用(交流、体験など)」の活動をするRMOは全組織の10%に過ぎない(2025年)。

 その理由は単純である。ここまで少数派化した農業生産者による「農地管理」を地域の優先の取組課題とするのは難しいからである。共通テーマとして,まずは生活関連課題があり,それを実現するためにも、例えばイベント等の「小さな成功」体験を試行錯誤しながらも積み重ねることが求められる。つまり、設立初期のRMOに「農地管理」を求めるのは無理がある。推進する行政が、農地管理ありきの姿勢であったならば、地域住民の内発力で課題解決に乗り出すという、せっかく出てきた動きを阻害することにもなりかねない。

 農村=農業者多数派社会という誤解は、農業政策=農村政策という発想を招きがちだ。そうではなく、両者のずれを認識しながらも、つながりを意識することが必要であり、そこに農村政策の難しさがある。だからこそ、「農村政策」という独自の領域の存在理由もある。