
▲八丈島の「大坂トンネル展望台」からのぞむ八丈富士(右後方)と海岸(東京都八丈町)
(写真提供:八丈町)
ジャーナリスト 人羅 格(第3365号 令和8年7月6日)
南国の豊かな自然と風物に恵まれた伊豆諸島・八丈島は、東京都八丈町が行政区域だ。人口約6600人。昨秋の台風で深刻な被害を受け、観光需要などの回復に取り組む。
島には八丈方言と呼ばれる独自のことばが伝わる。「いらっしゃい」は「おじゃりやれ」、早朝は「とんめて」。奈良時代の関東地方古語と同じ用法が残っているとされる。
標準語の浸透や高齢化とともに、使い手は減り続けている。ユネスコが日本で消滅する危機にあると公表した8言語(方言も言語として分類)に、「八丈語」はアイヌ語や沖縄の言葉などとともに含まれている。
このため、町は方言の維持と継承に努めている。現地で2022年度から毎年開く「八丈方言大会」もその一環だ。町民らが島ことばや維持する活動を語り、交流を深める。
昨年12月、足を運び見学した。地元小学生は八丈方言で「ひょっこりひょうたん島」を合唱。方言でLINEスタンプを作りアピールする女子高生、方言で民話を語る女性……。堅苦しくなく、楽しめた。「八丈・島ことばかるた」を使った住民によるカルタ大会も毎年の恒例行事である。
文化庁と八丈町、沖縄県内などの関係自治体は方言の維持に向けて連携する「危機的な状況にある言語・方言サミット」を毎年開いている。今年は鹿児島県喜界島(喜界町)で開催を予定する。
鹿児島県の沖永良部島(和泊町、知名町)は、「しまむに」と呼ばれる地域のことばを守ろうと、両町と国立国語研究所による連携協定を結んだ。児童が学校で住民から島ことばを聞く機会を設けたり、集落ごとに違う方言の辞書を住民有志が作ったりしている。地域の熱意が活動を支えている。
人口減少が進む。8言語(方言)に限らず、地域文化である方言やお国言葉は放っておくと「○○弁が消滅危機」ということになりかねない。生涯学習や学校でふれ、継承を後押しする場を自治体は意識的に設けてほしい。