法政大学名誉教授 岡﨑 昌之(第3352号 令和8年3月9日)
福島県でユニークな集落支援の試みが続いている。平成21年から始まった「大学生と集落の協働による地域活性化事業」だ。人口減少や少子高齢化に直面する県内の過疎・中山間地域の集落を、大学生等の「外からの力」を活用して、集落の復興や活性化を図ろうとする取組で、大学のゼミや研究グループが、2年度にわたって宿泊をしながら、年に数回集落を訪れ、住民とともに調査や活性化策の提案、実現への活動を行う。
この事業が実施された集落はすでに103に及ぶ。一方、参加した大学は県内の福島大学や会津大学などはもちろん、東北や首都圏、遠く関西や広島からもあり、全体で50を超え、それらの大学から103のグループが関わってきた。初年度は集落の課題や現況調査、次年度は活性化策の提案や実証活動、状況によっては3年目、4年目と活動に伴走しながら支援を続けるケースもある。年度末には活動中の大学ゼミ、受入れ集落、市町村と県の担当者が一堂に会し、活動報告会が行われ、最近では知事も楽しみにして参加すると聞く。
大学ゼミからの提案で、農家民宿の開業や特産品の開発やデザインなど多様な試みが生まれている。只見町布沢地区でこの事業に関わってきた宇都宮大学のゼミでは、卒業生も含めて地区を支援する任意団体が結成され、事業に参加したOBのひとりは、地域おこし協力隊を経て地元の交流施設の支配人となり、後輩たちと集落との交流支援や布沢地区の魅力発信に努めている。
「外からの力」で集落の復興を図ることが事業の目的であるが、「外から」の学生たちもこの事業から大きな力を貰っている。参加した学生たちは、集落で暮らす社会人や高齢者と対話を重ね、人口減少や高齢化の厳しい現実に直面する。他方、集落に滞在することから、濃密で親しい人間関係を経験し、農山村の暮らしの豊かさに触れる。集落に伝わる郷土料理を味わい、暮らしの達人の高齢者から集落の来歴を聞き、祭りや農作業、雪掘りを体験する。具体的な暮らしの場に身を置きながらの経験は、学生たちに大きな影響を与える。教室での学びにも勝る、ムラのもつ教育力とでも呼べるものが集落にはある。