一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山 浩(第3338号 令和7年10月27日)
今年に入って、改めて中山間地域において崩壊の危機が進んでいることを実感しています。
例えば、自治体や小地域の人口分析を行うと、10年後どころか5年後に小学生が半減する結果が多発しています。また、農地の荒廃も一気に進んでおり、主力世代である70代の引退が始まっていることを考えると、今後さらに加速するでしょう。あっという間に、集落がクズと竹に覆われる恐怖が増しています。そして、農村部においても、1人暮らしが増え世帯の平均人数が著しく減少しています。家族からコミュニティの役を出すことは難しくなり、家周りの環境管理などの自助能力も決定的に落ちています。
このまま放置すると、おそらくここ5年で、多くの地域において継承のバトンは落ちてしまうことでしょう。しかし、国を始めとする行政側の動きは鈍く、この「失われた30年」の「失敗の本質」であった「選択と集中」路線をさらに進め、周辺部の切り捨てに走ろうとする動きさえあります。
私には、「選択と集中」路線により地域社会の持続可能性を取り戻すことができるとは、到底思えません。第一に、地域住民の暮らしを守る方向にはなっていません。第二に、これから必ず実現すべき循環型社会に向けて、再生可能資源やエネルギーが多く存在する中山間地域を活用できないことは、決定的な誤りとなります。第三に、毎年発生確率が高まっている南海トラフや首都直下等の巨大地震が起きた場合、中山間地域は、国民の疎開先となる「日本の徳俵」の役割を期待されるからです。
都市部との格差是正をめざす従来の過疎対策の枠組みを脱却し、自然と社会の共生に基づく新たな循環圏を中山間地域に創設する人・金・技術の三位一体の国民的投資を、待ったなしで始動する時が来ています。毎年30兆円以上にも及ぶ海外からのエネルギーや食料輸入の節減効果だけでも、十分引き合う持続可能な未来への投資となるはずです。