早稲田大学政治経済学術院教授 稲継 裕昭(第3300号 令和6年11月4日)
早稲田大学政経学部のゼミは2年生後期から2年半。稲継ゼミでは、輪読のほかに、フィールドワークを盛んに行う。年間複数回訪問して政策提言をする場合と、年2回の合宿で短期間お邪魔してお話をお聞きする場合とがある。前者は旅費の関係で東京近辺になってしまう(今は茅ヶ崎市と日暮里繊維街)。コロナ以前は、岡山県の助成を受けて、岡山県美咲町南和気地区に2年間ゼミ生が通った時期もある。ゼミ生の多くは都会っ子だが、この事業のおかげで地元の人と何度も交流できた。地域の運動会やクリスマス会に出ることは彼らには新鮮であり、得られることも多かった。
令和6年9月、4年生の夏合宿で北海道上士幌町様にお世話になった。初日は、竹中貢・上士幌町長から町の取組について具体的にご紹介いただいたあと、庁内横断の若手で構成されたKWIチームから、町のデジタル推進や働き方改革についてご説明いただいた。その後、自動運転バスの体験乗車や、かみしほろマルシェ(完全無人店舗)、シェアオフィス、ドローン配送(離れた地域へ新聞等を配送)などの見学をさせていただいた。上士幌町は地域DXではかなり進んだ町で、SDGsの取組も進んでいる。
夜は、ゼミ生と町職員の混成でグリルを囲んでバーべーキューをした。肉が本当に柔らかくて美味しく、鹿や熊のジビエも味わい深かった。都会ではバーべーキューをするスペースがなく、学生たちも心底エンジョイして、町の職員の皆さまとの懇談にも花が咲いていた。
2日目は、午前中はタウシュベツ川橋梁や、ひがし大雪自然館、どこまでも続く大自然のパノラマ「ナイタイ高原牧場」をご案内いただいた。午後は、4班に分かれて、まずは、KWIメンバーから政策課題について詳しく教えてもらい、その後、ゼミ生だけで1時間話し合ってプレゼン準備をした。最後に、町長や職員の皆さんを前に、4班がそれぞれ政策提言をした。取り組める時間が短く、十分なものではなかったが、町長からはねぎらいとお褒めのお言葉をいただいた。
今回訪問した学生15人のうち、総務省と東京都庁に就職する学生以外は民間企業に就職する。だが、どこに就職しても、今回の訪問がこれからの仕事を進めるうえでの大きな糧になっていくことは間違いない。上士幌町の皆さまに心から感謝します。