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息の長い 魅力づくりを

印刷用ページを表示する 掲載日:2018年4月13日

フリーアナウンサー  青山 佳世(第3036号・平成30年4月9日)

例年にない速さで桜前線が北上している。20年前から毎年訪れる桜のトンネル、かつては見事な並木に感動したものだが、年々枝ぶりも花も勢いがなくなり、寄る年波を感じ寂しくもなった。一方、当時新しく桜の名所の仲間入りをした場所は枝ぶりも細くて頼りなかったが、今行ってみると、力がみなぎって枝が広がり、桜爛漫咲き誇り、大勢の花見客を喜ばせていた。桜の保存のために市民から寄付金を募って、ライトアップのぼんぼりに名前を入れる取組をし、周辺の店舗も増え活況を呈していたが、残念なことに、そのぼんぼりが上品とは言えない色合いで、桜並木の風景を壊していた。取組は素晴らしいのだが、ぼんぼりの色を工夫して桜の輝きを増す配慮が足りない、ほんの少しの心配りである。大勢の観光客が訪れるようになると交通整理、ゴミ対策など目の前の対策に追われ、さらに観光客目当ての店が溢れ、賑わいを超えて雑然としてしまう。まずは人を呼び寄せる魅力そのものを磨いて輝きを増すこと、そして短い命と言われるソメイヨシノ、その桜の美しさを次の世代にも楽しんでもらえるように、数十年のスパンで考えてほしいものだ。

各地海外からの観光客が増え、移動手段の確保、多言語化、DMOを始めとしたビジネス化に積極的に取り組む地域が増えている。地域の元気と経済的効果に期待したいところだ。

ただその魅力づくりとなると箱物を建設することや、マップやルート作りだったり表面的な取組が目立つことが危惧される。ここでも忘れて欲しくないのは、魅力そのものをどう磨き、持続、発展させるか、なのだ。そんな時、九州各地で活動する様々な人たちとお会いした。地域で花々を育てるグループ。新燃岳の風評被害にあう観光地へ地域の人たち自身が旅する企画を立てる人、風景にあった標識を考える取組、古民家を再生して空き家対策をし、地域の元気づくりをする、などなど故郷を愛する思いが溢れている。やはり地域の魅力一番はそこで暮らす輝く人たち、そして暮らしが創り出す風景である。そこに光が当たり、元気の源になる本来の観光を目指してほしい。