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ソフトに生きる

印刷用ページを表示する 掲載日:2007年4月16日

エッセイスト 山本 兼太郎 (第2597号・平成19年4月16日)

「この分では90歳までは大丈夫だ」といわれて驚いた。

胃腸、腎臓、高血圧と病気持ちであるのにと、けげんな顔をしていると「ただし、現在のような状態であれば・・・」という。「それでは悪い所だけを見ればどうですか」と聞くと、「そんなことはあまり考えない方がよい。それよりも、定年が60歳という有難い世の中になった。残りの20年30を、いかに楽しく生きるかを考えた方がよい」といわれた。

健康かしからずんば病気か、といった二者択一的な考え方はやめた方がよろしい。病気という弱点を抱えながらも、社会的に立派に生きていくのが人生というものだ。

絶対に混ざることのない反対の性格を水と油というが、これを上手にまぜあわせるとソフトなクリーム状になる。上手にまぜあわせるというのは空気を取り込むということであろう。

健康と病気も水と油のように正反対な性格だが、そこに空気を取り入れながら2つのものを融和させる。この場合、空気というのは心の問題もあるが、同時に生活環境と考えてはどうだろうか。

人生50年といわれたころは、生活の設計は2段階でよかった。それがいまでは3段階に考えねばならない、というのが古川俊之さんである。第1段階というのは、経済的に独立できず、いわゆる親がかりであり、ほとんどが学生時代。2段階目は、就職や結婚など、独立して社会生活を営む段階。ここまでが一生懸命勉強し、世の中に出てからは、社会的な地位の向上など上へ上へと目指す。60歳の定年以後はこうした上昇気流もなくなっている。これからの20年30年が第3の段階である。元気な長老は次の世代の育成に貢献すべきというのが古川さんの考えである。病気とかかわりながらもソフトに生きることである。

「軽く楽しく一心に」が千田是也さんの最後の言葉だった。