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健康寿命

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年6月2日

エッセイスト 山本 兼太郎(第2441号・平成15年6月2日)

「健康寿命」という言葉を教えられた。同じ長生きするなら、健康でと思うのは誰しも同じである。

日本人の平均寿命は、世間の好不況にも関係なく、依然として世界一で、八一・四歳(男七七・九歳、女八四・七歳)である。といっても、 これは平均の寿命で、寝たきりや痴呆の状態になっている人も含めての数字である。ひとさまのご厄介になって、なんとか生きているとなれば 寿命、すなわち長命を寿(ことほ)ぐという気持ちにはとてもなれない。

「健康寿命」というのは、健康に年相応の欠陥があっても、自立した日常生活ができるという寿命である。例えば、 脳卒中になっても、リハビリなどで、人手も借りずに日常生活ができるようになれば、それはそれで健康だという考え方である。平成十四年に、 WHO(世界保健機関)が発表した「健康寿命」では、日本人は七三・六歳(男七一・四歳、女七五・八歳)で、スイスの七二・八歳をおさえて、 元気年齢の方も世界一である。

日本人の平均寿命は八一・四歳であり、健康寿命の七三・六歳との差が七・八年で、この差を少しでも少なくすることが、重要になってくる。

この五月に「健康増進法」が施行になったが、これも「健康寿命」を少しでものばして、生活の質を高めて、医療費をおさえようということ であろう。そこで出てくるのが生活習慣病で、若いころから中年すぎにかけての食生活や運動不足による肥満、喫煙などによるものである。

世の中が豊になり、自動車などの乗り物が便利になって歩くことが少なくなる。一方では高カロリーのぜいたくな食べ物が日常化している。 そして休日は、ビール片手にくわえタバコで、テレビの前でごろ寝とくれば、これはもう、生活習慣病の日常生活である。

皮肉屋の英国人はいっている。「牛乳を飲む人よりも、牛乳を配達する人の方がより健康だ」