エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2614号・平成19年9月10日)
温泉の出る宿泊施設はつくりました。食堂も、野菜の直売所も。そば打ち指導や、田舎料理の講習会も、地元のボランティアの協力を得てイベントとしてやっています。行政も民間も、できるだけのことは、やっているのです。地域の活性化については、コンサルタントの助言を得てすすめているのですが……。
それでも観光客が集まらない。施設ができた最初の頃はよかったが、いまでは膨らんだ赤字が財政を圧迫している。なんとかいい解決策はないものか。
そう、悩んでいる町村は、日本のいたるところにある。話を聞いて行ってみると、宿泊施設は大型のもので、ひと昔前の、団体客専用のホテル式旅館のようなもの。いまどきの個人客や家族連れには好まれそうにない。
公営レストランのメニューは、カレーにハンバーグ。それも悪くはないのだが、地場の野菜を使っているといいながらこれといった特色もない。店の名前はドイツ語から取った覚え難いカタカナ名前。コンサルタントがつけたという。名前に合わせて外観も、スイス風だかオーストリア風だか、なんともメルヘンチックな屋根と色だ。うーん、これも最近流行らないパターンだよな……。
どうしたらいいでしょう、と聞かれても、すぐにこれといった対策は思い浮かばない。本当はそれらを全部ぶっ壊して、新しい、地に足の着いた施設をつくればよいのだが。
自分たちの町や村を見て、どこに魅力があるかを教えてください。
行政に関わる人たちは、外部の識者やコンサルに、そんなふうに頼むことが多い。
しかし、たしかに外部の視点も重要かもしれないが、自分たちで見つけられないような地域の魅力を、なにも知らずにやって来る観光客に向かって、心を込めて語ることがどうしてできるというのだろうか。