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廃車と景観

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年7月18日

廃車と景観

エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2527号・平成17年7月18日)

私は信州でワイナリーの建物にカフェレストランを併設して営業しているが、その眺めのよいテラスから、農道に放置されたままの廃車が連なっているのが見える。眼下に千曲川の流れる上田盆地、遠く正面に北アルプスを望む絶景が売りものなのに、目のすぐ下の畑のわきに錆びた金属塊が無残な姿をさらしているのはいかにも見苦しい。撤去してほしいと行政にも相談したが、所有者が不在なので手続きが取れないといってそのままになっている。

以前も近くの別の場所が、放置された廃車や廃物が山と積まれて産廃置場の様相を呈していたことがあった。そこは土地の一部を私が買い取るなどして整理したが、元の所有者が行方不明だったりすると、そうしたガラクタには誰も手がつけられないらしい。

おそらく、全国には同様のケースが無数にあるだろう。あきらかに価値がないと認められる廃物の場合、不在などの理由で所有者本人の同意を得られなくても、行政によって撤去することができるような、景観を優先した規定はできないものだろうか。

農村では、畑に廃車が置いてあることが少なくない。壊れて動かなくなったクルマをわざわざ畑に運んで、農具小屋代わりに利用する農家がいるからである。

この場合はさすがに強制撤去というわけにもいくまいが、そのまま放置され続け、農家の後継者もなく畑が荒れていくと、これも単なる廃品の置場と同様になってしまう。こうした光景もまた、全国のいたるところで見られるものだ。

金属やプラスチックの廃品廃材ゴミ廃車の類を、できるだけ自然の景観の中から排除したいものだと思う。ついでにけたたましい青色のビニールシートを濃い緑色か渋い茶色に変えられればさらに農村景観は改善されるのだが、こちらはコスト的に難しそうだ。