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「道の駅」再考

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年11月3日

エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2458号・平成15年11月3日)

私の住んでいる町にも「道の駅」ができた。

交通量の多い道路沿いに地域の特産品などを販売する施設を「道の駅」として建設する手法は近年全国の地方で見られるが、地ビールや温泉施設と同様、成功しているところもあれば困難を抱えているところもあるようだ。

いずれの場合も自治体から巨額の補助金を得て建設がおこなわれるが、永続的な運営を成功させるには地域の人びとの努力と工夫が必要になる。わが町の「道の駅」は開店以来まだ一ヶ月。連日の大賑わいで売上げも好調のようだが、はたしてこの人気がいつまで続き、定着するのか、決して楽観はできないと思う。各地にできる公共の温泉施設の例を見ても、オープン当初はものめずらしさも手伝って満員になるものの、その後近くに別の新しい施設ができれば客はどっとそちらに移ってしまう。活性化をめざす町村がそれぞれに頑張ることが、結果としてたがいに足を引っ張り合うことにもなりかねないのである。

「道の駅」に並べる商品も、農産物は人気だが季節による限定があり、食品ほかの加工品を地域の特産として観光客の認知を得るまでに成長させるのは考えるほど容易なことではない。その挙句、棚を埋めるためにどこかの「おみやげ」メーカーの既製品をラベルだけ張り替えて売る……というような誘惑に負けてしまうと、地域経済活性化のコンセプトはなしくずしに崩れていく。

地域に名前の知られた店や特産の品物があれば、なにもそれらを一ヵ所に集めて販売しなくてもよいのではないか。むしろ、買い物のためにその町や村の細い道を巡り歩くほうが、幹線道路沿いに店を構えて大型バスの観光客を相手にするより活性化には効果的かもしれないのである。

そろそろ「道の駅」も再考の時期にさしかかっていると思うのだが、どうだろうか。