エッセイスト・画家 玉村 豊男 (第2448号・平成15年7月28日)
全国の町村で女性による地域おこしの取り組みがさかんである。
特産の農産物を使って加工食品を開発する。パンを焼く、アイスクリームをつくる、田舎料理の食堂を開く。彼女たちのパワーはめざましい。
農林漁業者が、第一次産業だけでなく、第二次の加工、第三次の販売までを一貫して手がける六次産業あるいは通次産業を目指す動きは全国のどこにもあり、その運動の中心はほとんど例外なく女性たちである。それは、これまで家庭内の労働に閉じ込められていた女性たちの鬱屈したエネルギーが社会的な捌け口を求めてほとばしり出ている、ということでもあるのだが、せっかくのそのエネルギーをきちんと生かしている例は案外少ないのが実情だ。男たちが、真剣にサポートしないからである。
「女衆は元気がいいから」
「まあ、勝手にやらせておこうや」
使命感に燃えて奔走する女たちを、男たちはニヤニヤしながら眺めている。彼女たちのやる気を現実の事業に変えて利益を生み出すには、社会経験の豊富な男性たち、行政の中心にいる男性たちの積極的な協力が不可欠であるのに、自由にやらせておくことが度量の大きさだとでも言いたげな顔で、実はリスクをともに負うのを避けて責任を逃れようとする男たちが多い。
女たちが元気で頼りになるなら、男は裏方に回ってサポートするべきだ。それをやらないからいつのまにか彼女たちの元気も萎んでしまい、起業の夢が単なる仲良しサークルの自己満足に終ってしまうのだ。
特産品を加工して全国に通用するような商品に育てるのは、並大抵の努力ではできないことである。それには労働を惜しまない意欲的な女性たちだけでなく、企画や営業や広報宣伝のプロの男性が必要だし、男性が中枢を占める行政の援助も必要なのだ。男女共同参画社会というのはそういうことを言うのではないのか。