農村工学研究所研究員 坂本 誠 (第2677号・平成21年4月20日)
今年に入り、「地域おこし協力隊」(総務省)、「田舎で働き隊」(農林水産省)など、意欲ある都市住民―とりわけ若者を農山村に派遣し、地域づくり支援の担い手として活かそうという施策が次々と打ち出されている。従来型の補助事業や施設整備とは違い、「人」が主体となり、「人」と「人」との関わりに着目した新たな発想にもとづく施策であり、その成果が大いに期待される。
ただ「人」が主体となる施策であることは、同時に、施策の成否が、関わった「人」や地域を大きく左右し、場合によってはとりかえしのつかない事態をもたらす可能性があることも意味している。
新たな仕組みが十分な成果を上げるためにも、そして失敗を防ぐためにも、施策への取り組みにあたっては、次のような点に注意したい。
第1に、地元とのマッチングや派遣された若者のサポートに、町村の担当者が汗をかくことである。赴任した若者が地域に新しい風を送り込むに際しては、時には地元との間に摩擦を生ずることもあるだろう。地元と若者の間に入って対応にあたる「つなぎ手」としての町村担当者の役割および責任はきわめて大きい。
第2に、効果を性急に求めないことである。地域づくりは一朝一夕に結果が出るものではない。同様に、若者による地域支援の成果もすぐに出るものではない。
第3に、過大な期待をしないことである。社会経験の少ない若者のもつ技術や人脈は限られているし、「若さ」だけで乗り切るにも限界がある。また、若者に、自分より年上の住民の喚起・啓発を求めるのは酷というものだろう。そもそも、地域づくりの主役は、若者ではなく地域住民自身のはずである。その意味で、今回の施策では、地域が若者をいかに活用できるか、若者の行動から「気づき」を得られるか否か―地域の力や度量が問われているとも言える。
このように、新たな施策への取り組みには、手間暇をかけた根気強い対応が不可欠であることを覚悟する必要がある。しかし、手間暇かけて築き上げた「人」と「人」との関わりは、すぐには効果として現れないかもしれないが、地域の将来にとって大きな財産となるはずである。