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人手不足と仕事の見直し

印刷用ページを表示する 掲載日:2017年8月7日

東京大学名誉教授  大森 彌(第3009号・平成29年8月7日)

「まち・ひと・しごと創生法」に基づいて全国で創生事業が展開されているが、人口減少は着実に進展しており、それに伴い、いたるところで人手不足が起こっている。東京圏における民間企業では、募集をかけても人財が集まらないため、従業員の負担増、事業機会の喪失等の弊害が生じているという。そこで、企業の中には、全社員正社員化、年3回賞与、就業時間の短縮などの対策を講じて優秀な人財を確保しようとしているところも出てきている。

しかし、民間企業のこうした思い切った人財確保策を自治体の場合はとれない。どうしたらよいか。人事評価制度も活用して職員一人ひとりの生産性を高めることが考えられるが、それだけでは十分ではなく、業務の内容ややり方を見直して仕事そのものを思い切って減らすことが必要ではないか。

自治体の行政現場で行っている業務は、サービスにしても施設にしても、そのほとんどが国の定めた個別法に基づいている。その個別法をみると、条文の末尾の表現が、①「〇〇をしなければならない」、②「〇〇をするものとする」、③「〇〇をするように努める」、④「〇〇をすることができる」の4通りとなっている。①は、「但し書き」による例外の明記がない限り必ず行わなければならないこと、②は、①のような義務づけではなく、原則や方針の提示であり、合理的な理由があれば行わなくてもよいこと、③は、現実的な対応とし、そのように努めることが要請されているということ、④は、そうすることに法的な裏づけがあるが、そうしても、そうしなくてもよいこと、というように理解できる。

そこで、各係・課に与えられている所掌事務(〇〇に関すること)と各職員が分担している業務のうち、上記の①に該当するものは何かを特定し、それ以外の業務を、気がつかないまま①のように扱っていないかどうか総点検する。そして、地域の実情に即した地域課題を解決していくうえで自治体の判断として必要不可欠な業務を洗い出し、①以外については廃止・休止・縮小などを検討する。これは、法務的検討による減量作戦であり、当然、住民の納得を得なければならない。そのうえで、職員は自治体として必要不可欠な仕事をキビキビ、テキパキと処理するのである。

自治体には、個別法に規定がなくとも地域住民ニーズに応えるうえで必要な事務事業がある。それを維持するためにも、こうした見直し改革が不可欠ではないか。このような仕事の減量作戦は容易ではないが、人口減少時代への適応策として避けがたいと思われる。