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人口減少と町村職員の「人財」化

印刷用ページを表示する 掲載日:2016年1月25日

人口減少と町村職員の「人財」化

東京大学名誉教授  大森 彌(第2947号・平成28年1月25日)

現在、日本の総人口は1億2,695万8千人(総務省統計局2015年7月1日確定値)で、ピークの2008年より112万人減ったが、減ったのは日本人人口である。国が推進している「1億総活躍」とは、 すでに一定数の人口減少を織り込んでいる。かりに2060年に人口1億人を維持できるとしても、その間、約3000万人近い人口が減ることが前提となっている。すでに人口減少は避けがたいから、 何とかしのいでいかなければならないことになる。

そのうち、さまざまな分野で深刻化するのが人材(人手)不足である。 人材不足への対策は、①現に働いている人の生産性をたかめること、②省力化のための機器を開発し導入すること、③外国人人材を登用することである。②によってある程度人材不足を補いえるし、③もある程度有効だろうが、 なんといっても①による現有人員の「人財」化が重要である。「人財」とは並み以上に有能で有用な仕事・活動をする人物のことである。

東京圏はともかく地方圏の市町村では、職員の新規採用において技術職の採用が困難になっているだけでなく、応募人員に変化が起きている。かつて地方の市町村では「大卒」の職員は珍しかった。しかし、 大学進学率が高まり、自治体行政の遂行でもより高い「知力」が必要になったことから、むしろ「大卒」の職員が当たり前になった。それに再び変化が起こり、特に中山間地などの町村に大卒者(予定者を含む)の応募が減り、 あるいはごく少数になり始めているという。最終面談でこれぞと思う人物に、それも新規大卒者に「逃げられて」しまうのである。その結果、必要な人員補充のために「高卒」をより多く採用せざるを得なくなっているという。

もちろん、ある職員が「高卒」だからといって「人財」として活躍できないことはない。全体として、「定員の適正化」でより一層少数精鋭主義が求められ、 しかも非正規・非常勤職員が増えている中で、「高卒」が増えていけば、正規・常勤の「高卒」職員の働き振りが自治体行政の遂行にとって非常に重要になるだろう。そのためには、 採用後に放送大学など通信教育の大学への進学を奨励するとともに、キビキビ・テキパキと仕事をこなし、政策形成力を発揮できるような「人財」の育成と人事の工夫が不可欠になる。