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「農村文明塾」に寄せて

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年8月23日

東京大学名誉教授  大森 彌(第2730号・平成22年8月23日) 

2007年7月27日、全国町村会臨時総会の席で、私は、「町村―この基礎自治体の底力」と題する講演をさせていただいた。その際、次のように述べた。「皆さんは新井満さん作詞・作曲の『千の風になって』という歌をご存知でしょうか。秋川雅史さんの歌が大ヒットになりました。昨晩、拙いのですが、この歌の替え歌を作りましたので、気恥ずかしいのですが、ここでご披露したいと思います。

♪ 私の村を訪ねて/憐れまないでください/ここでわたしは生きます/愚痴ってなんかいません/空と大地の/空と大地の間の/この豊かな恵みを/受けとっています ♪

これが私の農山村へ寄せる思いです」と。

長野県木島平村(人口約5千人、芳川修二村長)は、「農村文明の創生」を唱導し、本年6月から「農村文明塾」を始めた。「農村文明」とは「日本の農山村が有する食糧生産、水源涵養、癒しの場といった多面的な機能に加え、稲作を中心に森と水の循環系を守りつつ、自然と共生して農耕生活を行う中で営々と築いてきた歴史的、文化的、教育的な価値、さらには地域で支え合う地域自治機能といった価値や機能を時代に則してさらに磨きをかけ、質の高いものに昇華させた自然と共存可能な持続型の文明」と定義されている。大都市への人口集中と都市型生活様式の一般化のなかで、「農村文明」とは、なかなかの覚悟と心意気である。東京生まれ、東京育ちの私も、「農村文明塾」をお手伝いしている。

そこで、替え歌の残りを試作してみた。作詞の才などないことは承知である。それでも、森と川と田畑と海をつなぐ水の循環こそ日本の国土と暮らしを守る基盤と考え、ゲリラ豪雨で被害を受けられた農山村の皆さんの難関を想いつつ、全国における農を支える運動を少しでも応援したいと思う。

♪ 春には水張り田おこし/タガメが息づき/秋は収穫に感謝し/総出で村祭り/森に降る雨は/清らかな水になり/水は川になって/魚を育てる/私の村を訪ねて/憐れまないでください/ここで私は生きています/負けてなんかいません/空と大地の/空と大地の間の/この豊かな恵みを/守り抜いています ♪