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「道州制と町村に関する研究会」報告書について

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年5月24日

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2720号・平成22年5月24日)

全国町村会では、道州制の導入が、とりわけ町村に大きな影響を及ぼす問題であり、様々な角度から検討を進め、議論を深める必要があるとの認識に立って、平成19年3月、「道州制と町村に関する研究会」を設置した。

研究会は、学識経験者八名と全国町村会事務局により構成され(座長・大森彌)、平成20年10月には「『平成の合併』をめぐる実態と評価」を公表し、第29次地方制度調査会の答申が「法令上義務付けられた事務の一部を都道府県が代わって処理する」方策に関し、「様々な論点や是非についての考え方があり、また、地域の実情も多様であること等から、関係者と十分な意見調整を図りつつ、多角的に検討がなされる必要がある」と指摘したのを重視し、「都道府県が代わって処理する」方策に関してどのように考えるか、今後どのような対応がありうるかについて検討するため、すべての町村を対象にして、その現状・認識・意見をアンケート調査し、その結果を取りまとめ、この5月末には印刷物として公表する。こうした調査は全国町村会としては初めてである。

報告書のタイトルは、「『平成の合併』の終わりと町村のこれから」となっているが、これには、次のような思いが込められている。まず、「『平成の合併』の終わり」とは、国が方針を定め都道府県が構想を作って、強力に推進するという意味での「合併推進運動」は終わった、その明確な認識に立っているということである。この間、町村が約2,500から900台にまで激減した。「平成の合併」の本格的な検証はこれからだが、国主導の合併は終わったことを前提にして、町村の現状と将来を考えなければならない、そういう分岐点で、この報告書は作成された。

このことが、「町村のこれから」という後段の言い方とつながっている。「これから」は前段の「終わり」と対になっているが、「町村のこれから」という言い方には、全国の町村が、厳しい時節であればこそ、自主独立の気構えで、農山漁村地域の暮らしと自治を守っていくのだ、より充実させていくのだ、そういう意欲をにじませている。「これから」は、予測のできない不安な未来というのではなく、大地にしっかり足をつけて、町村はどうあったらいいかを自分たちで決めていこう、そういう覚悟のイメージである。