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道州制と更なる市町村合併―恐ろしい接近

印刷用ページを表示する 掲載日:2008年4月14日

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2636号・平成20年4月14日)

自民党道州制推進本部が2008年3月13日にまとめた「道州制・第3次中間報告(たたき台)」では、「連邦制に限りなく近い道州の導入を目指す」として、区割(10程度)、機能や..制度(議会、公務員制度、税財政)のほか、基礎自治体の規模と数について言及している。「道州制の導入に併せて、住民に身近な事務が住民に最も身近なところで決定される体制を確保するため、現在都道府県が行っている仕事の大部分を基礎自治体に移譲する。これに伴い、基礎自治体の事務・権限は基本的に一律となり、現在の中核市程度の人口規模(人口30万以上)あるいは最低でも人口10万人以上の規模が求められるのではないか。このため、市町村合併をさらに強力に推進する必要があり、その結果、700から1,000の基礎自治体に再編されるよう取り組む必要があるのではないか。」としている。

道州制移行目標を2016、17年としているから、「平成の大合併」の余波が収まらぬうちに、再び市町村合併ということになる。自民党で道州制推進の旗振り役を果たしてきた久世公堯氏は「1,000という目標を示す説もあるが、これは単なる数字の遊びであって、市町村の行政の実態を熟知する立場からは正しくはない」と言っているではないか。しかも、市町村数を700から1,000へ再編という言い方は民主党と同じである。

この点で自民党と民主党では対立軸がなくなってきた。これは恐ろしい接近である。もし700ということになれば、現在1,000ある町村は皆無になる。その場合は「強力推進」とは編入合併の強制になるだろう。地方自治の実態にそぐわない、町村切捨ての道州制をどうして自民党は推進するのだろうか。先の参議院選挙の惨敗の原因を市町村合併との関係で追究することもなく、合併によって自治権を失った旧町村地域の衰退に関する検証も済まないのに、市町村合併を不可避とする道州制導入を強行するのであろうか。

町村取りつぶしは政権党としての自民党を必ず危うくする。