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子育ては「早寝、早起き、朝ご飯」

印刷用ページを表示する 掲載日:2005年8月1日

東京大学名誉教授  大森 彌 (第2529号・平成17年8月1日)

子育てに関係した事件が毎日のように報道されている。親が育児を放棄したり、子どもをいじめ殺したりする一方で、閉じこもりの子、家出状態の子、非行に走る子、人を平気で傷つけ殺す子など、どうやら子育ての機能不全が起こっているとしか思えない状況が生じている。子どもの言動が理解できない、どう対処してよいか判らないと育児相談に訪れる親、子育てに自信を失いかけている親も後を絶たないという。

父親は言うに及ばず、母親も自分で産んだ子どもを本能として育てるとはいえない。自分たちで作った子どもは自分たちで育てるのが当然であるというのは、人間の本能に根ざしているのではなく、文化(常識・観念)の作用である。本能があるなら自分で産んだ子どもを遺棄する母親などいるはずがない。自分の子どもは自分で育てるのが自然だし当然だという文化の力が弱まれば、悲劇は、まず産まれてきた無力な子どもの側に起こる。

子育てを研究している小児科医などによれば、まったく無力な子どもにとって最も大事なのは、物心がつく前に特に母親の愛情に包まれて介護されることである。これにより「基本的信頼」が感得されるからだという。そして、徐々に、自分とは異なった人がいて、物事は自分の思うようにはならないことを体験していくことになる。自立へ向かい、社会の中で生きていく知恵と技を身に付けていくのである。

人間の身体は自然である。しかし、人間の脳は、自分もその自然の一部であることを忘れやすい。早寝すれば早起きになるのは身体の作用である。夜更かしして午前中寝ていれば、身体も脳も目覚めは遅くなる。早起きして光を浴びれば脳も目覚める。早起きすれば、朝食がとれる。朝食をしっかりとれば身体と脳に活力が生まれる。早寝、早起き、朝ご飯になれば、個食・孤食はなくなる。一家団欒とまではいかなくとも、家族と語らいながらの食事も増える。子育ては「早寝、早起き、朝ご飯」が基本

そして、朝食は米飯としたい。