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強制編入は回避できたが・・・

印刷用ページを表示する 掲載日:2003年5月19日

千葉大学教授・東京大学名誉教授  大森 彌 (第2439号・平成15年5月19日)

地方制度調査会の中間報告が出た。強制編入は断念したものの、小規模町村については、さらなる合併推進での都道府県の関与を強め、なんとしても解消していきたいという考え方がにじみ出ている。一方、合併の際の受け皿という性格をもっているが「地域自治組織」制度の導入と「包括的な基礎的自治体の形成」を提言し住民自治の充実を図ろうとしている。

「国土 の大半の地域を市並みの権限と能力をもつ基礎的自治体に区分したい」という考え方を中間報告では「大半の国民が、こうした基礎的自治体の住民になる」と修正した。そして、2005年4月以降、新法を制定し、財政支援なしに、さらに自主的合併を進めるとし、その際の都道府県の役割として合併構想の策定と市町村に対する勧告・あっせん等を提案した。

これは、市町村の廃置分合・境界変更の決定が、都道府県の法定受託事務(メルクマールの「国家の統治(1)の基本に密接に関連を有する事務」)であることと関係している。しかし、現に都道府県の間には市町村合併推進の熱意に相当な違いがあり、この行政手法がどこまで効果を発揮するかは判らない。

合併できなかった市町村が「包括的な基礎的自治体」になりたいと申請してきた場合「都道府県知事が関係市町村の意見を聴き、当該都道府県議会の議決を経て、当該市町村がいずれかの基礎的自治体を形成する地域自治組織となることについて決定しうる仕組みを検討するものとする」としたが、強制すれすれの関与で、はたして実行可能かどうか疑問である。

また、原案には「小規模な市町村等に対して行われてきた財政上の特例的な措置についても見直しを図ることが避けられない状況にある」とあったため総会で修正されたが、やはり合併の促進策として国は段階補正の割増措置の縮小を考えていることをうかがわせる。依然として要注意である。