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合併と地域自治の充実策

印刷用ページを表示する 掲載日:2002年4月8日

千葉大学教授・東京大学名誉教授 大森 彌 (第2394号・平成14年4月8日)

私は、かねがね、外に向かって区域を拡大するならば、従来以上に内における地域自治の充実を図る必要があると指摘してきた。区域を広げると、周辺地域が寂れるとか、自治が遠のくという見方があり、それをもって合併を見送ろうとする動きがあるが、それは、構想力と手法が貧困であるからではないかと思う。

もし、現下の状況を熟慮し、将来を展望したうえで合併を決断するならば、必ず、これまで各町村ががんばって築いてきた地域の個性と自治の実績を生かす工夫をすべきである。

合併は、複数の自治体が一つになって、その活動を統合していくことでもあるから、合併後は、よほどの手立てを講じておかないと、一般には「均衡ある地域(旧市町村)の発展」はむずかしくなる。そこで、合併に際し、次のような地域自治の充実を図る制度的な工夫を検討してみてはどうであろうか。

①合併後の新議会の議員定数のうち、一定数を旧市町村単位で選挙し、議会における地域の意思を反映させる仕組みとする。これは、選挙区制度を導入し、地域選出の議員を確保することである。

②合併特例法に規定されている「地域審議会」を採用し、これを恒常化する。審議会のメンバーに、地域選出議員が加わり、全面的な地域住民参画の場とする。地域審議会の審議結果を議会と首長が最大限尊重することを条例で義務づける。

③合併後の行政組織として、例えば「地域局」を置き、地域のニーズに根ざした一定の事務事業(必要なら府県からも移管)を執行する職員と予算を付与する。その局長の人選に際し、地域住民の意向を反映させる工夫(例えば住民面接)をする。

地域自治を充実する意思・意欲を持たずに市町村が、やむを得ず合併しても不平不満がでてきて地域がよくならないでのはなかろうか。