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課税自主権

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年4月10日

千葉大学法経学部教授 大森 彌 (第2310号・平成12年4月10日)

東京都が外形標準課税の条例化を打ち出してから、にわかに自治体の課税自主権の問題が世間の注目を浴びるようになったが、地方分権推進委員会の勧告、政府の推進計画の決定に基づき、自治体の課税自主権の尊重のための地方税法の改正が行われている。その主たるものは次の通りである。

①法定外普通税の許可制度は、より課税自主権を尊重する観点から廃止し、都道府県又は市町村が法定外普通税を新設又は変更するに当たっては、国(自治大臣)と事前協議を行うこととする。ただし、税源の所在及び財政需要の有無については、事前協議の際の協議事項から除外する。②法定外目的税については、住民の受益と負担の関係が明確になり、また、課税の選択の幅を広げることにもつながることから、条例で定める費用に充てるため、その創設を図る。国は、法定外目的税の新設又は変更に係る協議の申出を受けた場合は、一定の事由があると認める場合を除いて同意しなければならない。③個人の市町村民税については、その制限税率を廃止する。市町村が自ら納税義務者の所得を計算して市町村税を課税することに係る自治大臣の許可を廃止し、自治大臣の同意を要する協議に改める。

これまで、少なくとも現行の地方交付税制度が定着して以後は、総じて、自治体は、対住民に説得で苦労の多い課税自主権の行使には積極的ではなかったし、また、地方財政法上の課税自主権の充実にも熱心ではなかった。もっぱら財源の確保と拡大を求めてきた。従って、課税の説明責任という自治体にとって最も基本的な訓練がなされてこなかった。これこそわが国の地方自治の最大の弱点である。今後の分権改革の眼目は、この改革に向かって自治体が創意工夫すると同時に税財政制度の見直しを実現することである。