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再び「説明責務」について

印刷用ページを表示する 掲載日:2000年2月21日

東京大学大学院総合文化研究科教授 大森 彌 (第2304号・平成12年2月21日)

国の行政を納税者指向へ質的に転換させるために、法律上の仕組みとして、情報公開、政策評価、パブリック・コメント(パブコメ)、説明責務といった新たな考え方が実施され始めている。この中には、情報公開のように自治体が先駆けたものもあるが、明治以来の官のシステム(意識と行動様式)は大きなうねりのように変化しようとしている。その動向は自治行政の改革にとっても重要な参考となる。このうち、再度、説明責務について触れておきたい。

この概念は、来年4月から実施される「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(いわゆる情報公開法)の第一条の「この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」という規定の中に初めて登場した。政府の諸活動を国民に説明する責務をこのような形で正面から規定したのは画期的である。このこともあった、「説明する責務」が一躍脚光を浴びることとなったといってよい。

説明する責務は、英語のaccountability アカウンタビリティ)の邦訳であるといわれる。これまでは会計検査とか監査委員監査を通した会計責任の確保という意味で使われてきたが、それは、公金の使途が規則どおりに行われているかどうかをチェックすることに主眼がおかれている。しかし、新たな「説明責務」は、ある事業なり施策なりがどうしてとられたのか、それらがどうしてある結果をもたらしていないのか、あるいは副作用をもたらしているのかを筋を立てて説明することを意味している。これは、地域における行政を担当する町村長にとって、当たり前のように思われるかもしれないが、実は、よく吟味し実行するとなるとなかなか厳しいものがある。一大挑戦の覚悟が必要である。